Augusta Saraiva

  • 1月のコアCPIは前月比0.4%上昇、前年同月比3.3%上昇
  • 総合CPIは前月比0.5%上昇、30%近くが住居費によるもの

米国では1月に消費者インフレが広がりを持って加速し、連邦公開市場委員会(FOMC)が近く政策金利を引き下げるとの期待はさらに薄れた。

キーポイント
・食品とエネルギーを除いたコア消費者物価指数(CPI)は前月比0.4%上昇-市場予想は0.3%上昇
 ・昨年12月は0.2%上昇
 ・前年同月比では3.3%上昇-予想は3.1%上昇
・総合CPIは前月比0.5%上昇-予想は0.3%上昇
 ・前年同月比では3.0%上昇-予想は2.9%上昇

  総合CPIの前月比は、2023年8月以来の大きな伸びとなった。統計発表元の労働統計局は、上昇分の30%近くが住居費によるものだと説明。卵の値上がりも指数全体を押し上げた。

US Inflation Heated Up at Start of New Year

Core consumer price index rises most since March in broad advance

https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/e68f746abcd36a2be613b0311a022c4c.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

Source: Bureau of Labor Statistics, Bloomberg

  この日のデータは、インフレ抑制の進展が滞っていることをあらためて浮き彫りにした。労働市場の底堅さとインフレ動向を併せて考えると、FOMCは予測可能な将来において金利を据え置く可能性が高い。関税をはじめとするトランプ政権の政策は、すでにインフレ期待を上昇させており、金融政策当局者は政府の政策がさらに明確になるのを待っている。

  発表後の金融市場では米国債利回りが大きく上昇。円売り・ドル買いが優勢となり、円は一時154円台後半まで売られた。金利スワップ市場では、今年予想される利下げは25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)一度きりとなった。CPI発表前は2回近くの利下げが予想されていた。

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  ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「エネルギーや食品、コア項目など、強さは広範囲にわたっている。FOMCにとっては依然難しい価格環境が示唆されたと考えている」と述べた。「FOMCが様子見でいる期間は、この統計発表を受けて長くなったと思われる」と続けた。

  トランプ米大統領は12日朝、金利の引き下げを求めた。パウエルFRB議長は前日の上院公聴会で、政策金利の引き下げを急いでない姿勢をあらためて示した。同議長はこの日、下院で証言に臨んだ。

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食料品、住居費

  1月は食料品価格上昇の影響が大きかった。その3分の2は卵の価格上昇による。卵は15%余り値上がりし、2015年6月以来の大幅となった。コア価格指数に目を向けると、処方薬と自動車保険、航空運賃の価格が上昇。ホテル宿泊料金と中古車も価格が上がっており、ロサンゼルス近郊の大規模な火災が影響したと考えられる。

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  サービス分野最大の項目である住居費は、1月に0.4%上昇。このうち帰属家賃(OER)と家賃はいずれも0.3%上昇した。

  統計には消費動向をより正確に把握するためのウエート改定が反映された。改定の結果、昨年のCPIは軽微な修正にとどまった。年初は企業が大幅な値上げを実施する傾向がある。複数のFRB当局者や一部のエコノミストは、インフレ統計はこの時期に上振れしやすいと留意を促していた。

  ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン、スチュアート・ポール両エコノミストは「1月のCPI統計は総合指数、コア指数ともに予想外の大幅上昇を示した。しかし”1月効果”とも呼ばれる残存季節性の影響が強いと、われわれは考える。従って強い数字が発するシグナルは限定的だ。企業は年初に価格を見直す。季節調整がこの典型的な現象を適切に処理できないと、季節調整済みの数値は通常より強いものになる」と解説した。

  ブルームバーグの計算によると、住宅とエネルギーを除いたサービス価格は0.8%上昇と、昨年1月以来の大幅な伸びだった。FRBは全体的なインフレの道筋を見極める上で、こうした指標を確認する重要性を強調しているが、当局は別の指標に基づいてそれを算出している。

  その別の指標である個人消費支出(PCE)価格指数は、CPIほど住居費のウエートが高くない。PCE価格指数の伸びが当局目標の2%に近づきつつあるのは、それが一因だ。13日に発表される1月の生産者物価指数(PPI)で、PCE価格指数に直接取り込まれるカテゴリーの状況がより明らかになる。

  食品とエネルギーを除いた財の価格は、23年5月以来の大幅上昇となったが、中古車を除くとほぼ変わらず。

  金融当局は個人消費の動向を見極める上で、賃金の伸びにも注目している。同時に発表された別の統計では、1月の実質平均時給が前年同月比で1%増加したことが示された。

  統計の詳細は表をご覧ください。

原題:US Inflation Tops Forecasts, Bolstering Case for Fed to Hold(抜粋)