Alberto Nardelli、Ellen Milligan、Alex Wickham

  • ウクライナに関する話し合いの主役は米国と中国-米当局者
  • 欧州はウクライナの安全保障計画についての合意に向け駆け引き
A heavily damaged building in Ukraine
A heavily damaged building in Ukraine Photographer: Genya Savilov/AFP/Getty Images

バンス米副大統領は14日、ミュンヘン安全保障会議でのスピーチで、欧州の指導者らが民主主義の価値観を損ねていると非難した。

  トランプ米大統領と側近が欧州連合(EU)に対して抱いている敵意を露わにした、激しい攻撃だった。トランプ氏らはEUを、米企業を抑制する「大きな政府」の象徴と見なしている。

TOPSHOT-US-EU-DIPLOMACY
パリの米大使館でフォンデアライエン欧州委員長と話すバンス氏(2月11日)Photographer: Ian Langsdon/AFP/Getty Images

  バンス氏の演説は、欧州の目を覚まさせた。エストニアのツァフクナ外相は「存亡に関わる問題だ」と、ミュンヘンでインタビューに答えて述べた。フランスのマクロン大統領は、対応策を練るために欧州の首脳による緊急会議のを招集しようとしている。

関連記事:マクロン仏大統領、欧州首脳をパリに招集-ウクライナ問題協議へ

  バンス氏は、第2次世界大戦から1990年代のバルカン紛争まで、米国は必要とあればいつでも介入してくれるという欧州の幻想を打ち砕いた。

  バンス氏は「現在の欧州を見ると、冷戦の勝者たちの一部には何が起きたのかよく分からない」と述べた。ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の党首に会うために退席し、欧州の主流派政治家を軽視する姿勢を見せつけた。

61st Munich Security Conference
ミュンヘン安全保障会議で演説するバンス氏(2月14日)Photographer: Sean Gallup/Getty Images

  米政府高官はミュンヘンで欧州からの参加者の一部に対し、ウクライナを巡る話し合いでは米国と中国が2大国だと考えていると述べた。ある欧州政府高官が言うように戦争はEUの裏庭で起こっているにもかかわらず、欧州は重要なプレーヤーとは見なされていない。

  既にロシアとの交渉に入ろうとしているトランプ氏とプーチン氏の間で合意が成立した場合に備え、欧州はウクライナの安全保障計画について合意するための駆け引きを繰り広げている。トランプ氏は早ければ今月中にもロシアのプーチン大統領と会談する予定だ。

関連記事:米ロ高官が会合へ、トランプ・プーチン首脳会談準備-ウクライナ協議

  今年のミュンヘン会議に集まった欧州政府関係者の多くが懸念しているのは、トランプ氏がウクライナへの支援を後退させることで、北大西洋条約機構(NATO)の東部国境防衛の意思をプーチン氏に探らせようとしているのではないかという点だ。

  プーチン氏の行動は「NATOの試練となるだろう」とツァフクナ氏は述べた。

  欧州では長年、共通の防衛戦略の必要性について多くの議論がなされてきた。マクロン氏は欧州の能力強化の必要性を最も強く訴えていたが、進展することはなかった。

  バンス氏が演説した翌日の15日、ウクライナのゼレンスキー大統領は、戦争終結計画についてトランプ氏と話し合った際に「トランプ氏は一度も、協議のテーブルに欧州が必要だとは言わなかった」と語った。

  「これは多くのことを物語っている。常にそうしてきたからというだけの理由で米国が欧州を支える時代は終わったのだ」と述べた。

US Treasury Secretary Scott Bessent in Ukraine
ウクライナを訪れたベッセント米財務長官と会談するゼレンスキー氏(2月12日)Photographer: Andrew Kravchenko/Bloomberg

  ゼレンスキー氏とトランプ陣営の両方から話を聞いた欧州の関係者は、ウクライナを巡る決着は数カ月以内に訪れる可能性があると言う。

  ロシアは既に一流の交渉人たちを招集し、待ち構えている。欧州は、米国が既に譲歩し過ぎており、問題は解決済みと宣言して、そのしわ寄せを欧州に押しつけようとしているのではないかと懸念している。

原題:Trump Is Rushing Toward a Deal With Putin as Europe Left in Dust(抜粋)