Jorge Valero、Milda Seputyte、Sanne Wass

  • 3月の次回首脳会議までに新たな資金調達策が提示-ポーランド首相
  • マクロン氏、首脳会議後にトランプ、ゼレンスキー両氏と電話会談

フランスのマクロン大統領は17日、英国のスターマー首相やドイツのショルツ首相を含む各国首脳をパリに招き、域内の防衛能力強化策について協議した。共同債発行については特に議論されなかったが、ポーランドのトゥスク首相は、3月20、21両日に開催される次回の首脳会議(サミット)までに新たな資金調達策が提示されると述べた。

  マクロン氏は首脳会議後にトランプ米大統領およびウクライナのゼレンスキー大統領と個別に電話会談し、米国と足並みをそろえることを確認。X(旧ツイッター)への投稿で「われわれはウクライナにおける強固かつ永続的な平和を求めている」とし、「これを達成するには、ロシアが侵攻を停止する必要があり、同時にウクライナ人に対する強固で信頼性の高い安全保障が伴わなければならない」と述べた。

European Leaders in Paris for Ukraine Talks
マクロン大統領(左)とショルツ首相(2月17日)Photographer: Nathan Laine/Bloomberg

  さらに「われわれは全ての欧州人、米国人、そしてウクライナ人とともに取り組むつもりだ。それが重要だ」と強調した。 

  ゼレンスキー氏は、マクロン氏と欧州情勢やウクライナの安全保障について協議したと明かした。「安全保障は強固で信頼できるものでなければならないという共通のビジョンをわれわれは共有している。このような保証のない決定、例えば崩れやすい停戦協定などは、ロシアによる新たな策略であり、ウクライナや他の欧州諸国に対するロシアによる新たな戦争の前兆でしかない」とコメントした。

  事情に詳しい関係者によると、欧州連合(EU)内で防衛費の増額方法を巡る議論が活発化しており、共同での資金調達を現実的な選択肢として考える首脳が増えているという。

  過去1週間にトランプ米政権の高官らは、欧州の意向を聞かずにウクライナの将来に関する決定を前進させる意思を示した。欧州の安全保障体制を一変させるような決定が頭越しに行われる可能性に危機感を抱いた欧州の首脳らは、自らの防衛に発言権を確保しようと、共同債など大胆な措置の検討にも前向きであることを示唆するようになった。

  フランスのアダッド欧州担当相はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「このような非常事態に直面し、歴史的な決断を下す時だと思う。実際、例えばユーロ共同債は話し合うべき仕組みの一つだ」と語った。

  17日の欧州首脳会議に先立ち、米国は欧州諸国に対し、ウクライナに提供する用意のある安全保障の確約の内容および、同国に派遣した軍がロシアの攻撃を受けた場合の対応の詳細を明らかにするよう要請。ブルームバーグ・ニュースが確認した文書によると、欧州の同盟国がウクライナへの安全保障提供と将来のロシア抑止にどのように寄与できるのか、詳細を求めている。

関連記事:欧州派遣軍がロシアの攻撃受ければどうする、米国が詳細要求 (1)

  防衛費増額の見通しから、17日の取引では欧州債が売られ、防衛関連企業の株価は上昇した。

  ドイツ10年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、2.50%弱を付けた。フランスとイタリアの10年債利回りも同様に上昇。米国債市場は同国の祝日のため休場だが、先物は10年債利回りが4.50%を上回っていることを示唆する。

関連記事:欧州債に売り圧力、安全保障強化で支出拡大観測-17日に首脳会議 (3)

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、ウクライナの防衛と欧州主要国の国防強化には今後10年間で3兆1000億ドル(約470兆円)の追加費用がかかり得ると推計する。北大西洋条約機構(NATO)の計画立案当局は、防衛費を国内総生産(GDP)の最大3.7%に加盟国は引き上げる必要があると試算したと、ブルームバーグは先に報じた。NATOに加盟する32カ国のうち、GDP比2%の防衛支出目標を昨年時点で達成しているのは23カ国だけだった。

  資金調達について協議されている選択肢には、EUの財政規則に抵触せず調達額を引き上げることが可能な免責条項も含まれる。欧州委員会のフォンデアライエン委員長は先週のミュンヘン安全保障会議で、このような防衛投資のためのメカニズム発動を提案した。

  欧州委のドムブロフスキス委員(経済担当)は17日、ブリュッセルで記者団に対し、EUは政府支出を支援する方法を見いだすと強調。「防衛費に対する欧州の財政規則についてより柔軟になるとともに、EU法で既に定められている免責条項をどのように適用するかを現在検討している」と述べた。

Most NATO Members to Meet 2% Spending Goal

Defense expenditures as a share of GDP, 2024 estimates

https://www.bloomberg.com/toaster/v2/charts/1n5en5j4zthpnqtk8ujqead7r258czin.html?brand=cojp&webTheme=default&web=true&hideTitles=true

Source: North Atlantic Treaty Organization

Note: US (3.38%) and Canada (1.37%) not on map

  関係者によると、利用可能な別の選択肢としては、パンデミック復興基金など既存の資金を防衛支出に転用するなどがある。また、長い議論を避けてより柔軟に共同債を発行できるようにするため、EU27カ国全てではなく、一部の加盟国だけで開始する案も浮上している。

  ベーアボック独外相は先週末、強力な防衛体制の構築に向けた重要な計画が進行中であることを示唆し、「ユーロや新型コロナウイルスの危機と同様に、欧州の安全保障のための財政パッケージがある」と発言。「それは近い将来に実現するだろう」と述べたが、それ以上の詳細には触れなかった。

  当局者によると、23日に予定されるドイツの総選挙前に論争を巻き起こさないよう、新たな支出計画は選挙後まで明らかにされない。ドイツとオランダは、EUの共同借り入れに伝統的に反感が強い。

  リトアニアのサカリーニ国防相はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、ブリュッセルとミュンヘンでの4日間を経て、EUの財政規則と共同債発行についてEU加盟国の間で認識に大きな変化があったと指摘。「欧州共同の手段について、パンデミック時や環境目的で活用したような連帯の手段を即座に立ち上げる必要がある。全員またはほぼ全員が賛同すると思う」と語った。

原題:EU Joint Funds Gaining Support as Leaders Face Defense Needs (1)
US Asks Europe What Kyiv Peacekeepers Should Do If Attacked (1)
France Says Joint Bonds on Table to Finance European Defense (1)
Macron Seeks to Align Europe, Ukraine With Trump on Peace Talks(抜粋)