Rita Nazareth
- FOMC議事要旨は金利据え置きとQT停止を示唆
- ドル続伸、米当局が利下げに慎重で-円は日銀のタカ派発言で上昇
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19日の米株式相場は小幅続伸。S&P500種株価指数は2日連続で過去最高値を更新した。米金融当局が利下げを急いでいない姿勢を示したが材料視されず、前日と同様、終盤に買いが優勢になった。
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米連邦公開市場委員会(FOMC)当局者は1月の会合で、根強いインフレと経済政策の不確実性を背景に、金利を据え置く構えを表明していた。金利先物市場の動向によれば、2025年に1回の利下げが予想されている。2回目もあり得るとみられている。
関連記事:FOMC議事要旨、インフレ抑制で進展するまで金利維持と示唆 (2)
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6144.15 | 14.57 | 0.24% |
ダウ工業株30種平均 | 44627.59 | 71.25 | 0.16% |
ナスダック総合指数 | 20056.25 | 14.99 | 0.07% |
ブック・リポートの著者、ピーター・ブックバー氏は「当局は再び利下げを実施する前に、しばらく様子を見るだろう」と予想。「私は『利下げ』と言っているが、それは依然として緩和バイアスがあるように思えるからだ。当局はバランスシートについてもコメントした。これも利回りがやや低下した一因だろう」と述べた。
慎重な姿勢を示す兆候として、ディフェンシブ銘柄が堅調だった。マイクロソフトの同社初となる量子コンピューティング向けチップの発表をきっかけに、量子コンピューティング関連株が上昇した。一方、住宅建設株は安い。トール・ブラザーズの決算と住宅着工件数から不動産市場のさらなる混乱が示唆されたため、売りが膨らんだ。
関連記事:米住宅着工件数、予想以上の落ち込み-集合・一戸建て共に減少 (1)
S&P 500 Hits All-Time Highs
Source: Bloomberg
米国債
米国債相場は上昇。FOMC議事要旨が公表された後、上げ幅を拡大した。議事要旨によれば、金融当局は債務上限の問題が解決するまで、量的引き締め(QT)として知られるバランスシートのランオフ(償還に伴う保有証券減少)の一時停止または減速の必要性について協議した。QTは2022年6月以来、続いている。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
米30年債利回り | 4.77% | 0.1 | 0.02% |
米10年債利回り | 4.53% | -1.8 | -0.39% |
米2年債利回り | 4.27% | -3.6 | -0.83% |
米東部時間 | 16時53分 |
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TDセキュリティーズのジェナディー・ゴールドバーグ氏は「ここで重要なのは、QTが従来予想よりも若干早く停止する可能性があることだ」と述べた。同社は9月にQTが終了すると予測している。同氏は「QTが現在予想されているよりも若干早く停止するリスクが高まり、米国債の発行が若干減少するため、米国債にとってやや強材料となるはずだ」と述べた。
外為
ニューヨーク外国為替市場ではドルが続伸。米金融当局者が追加利下げに慎重な姿勢を示したため、ドル買いが優勢になった。日銀審議委員のタカ派的な発言を受け、円はドルに対して主要通貨の中で最も上昇した。円は一時、1ドル=151円25銭に上昇した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1292.01 | 2.14 | 0.17% |
ドル/円 | ¥151.49 | -¥0.57 | -0.37% |
ユーロ/ドル | $1.0424 | -$0.0022 | -0.21% |
米東部時間 | 16時53分 |
原油
ニューヨーク原油相場は続伸。ロシアやカザフスタンをはじめ、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」による供給が不透明な中、終値で1週間ぶりの高値となった。
一連の供給懸念が価格を押し上げたほか、重要なテクニカル水準が下値を支えている。
OPECプラスは、4月に予定する段階的な供給引き上げ開始の延期を検討。ウクライナのドローン攻撃により、パイプラインからの石油を受け取るロシアの施設が損傷を受けたことで、カザフの主要パイプラインを通じた輸出は最大30%減少する可能性がある。主要7カ国(G7)は、ロシア産原油に対する価格上限の修正を検討している。ウクライナ侵攻を続けるロシアの石油収入を減らすことで、停戦交渉の進展を後押したい考え。
Oil Trades in Narrow Range as Volatility Declines
Futures have moved in a relatively narrow range this month
Source: ICE, Nymex
市場では日量数十万バレルのイラク産原油がキルギスタン経由で戻ってくる可能性も意識されている。この原油が輸送されるとみられる港を持つトルコは、原油フローの再開についてまだ聞いていないと明らかにした。
フォレックス・ドット・コムのマーケットアナリスト、ラザン・ヒラル氏は「原油高に備えたヘッジ需要が再燃している」と指摘。「制裁や関税、地政学不安が混在することにより生じる不確実な影響にトレーダーは備えている」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物3月限は、前日比40セント(0.6%)高い1バレル=72.25ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント4月限は0.3%上げて76.04ドル。
金
金スポット相場はほぼ変わらず。トランプ米大統領による新たな関税の脅威や地政学的な緊張の高まりを背景に、逃避先資産として選好され、早朝には1オンス=2947.01ドルの最高値を更新していた。
その後は下げに転じる場面があったものの持ち直し、最高値圏にとどまっている。トランプ氏は前日夕、自動車や半導体、医薬品に税率25%前後の輸入関税を賦課する可能性があると語った。
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地政学情勢も緊迫化した。トランプ氏はこの日、ウクライナのゼレンスキー大統領を「選挙を実施しない独裁者」と呼んだ。ゼレンスキー氏はこれより先、トランプ氏はロシアが作り出した「偽情報の空間」に住んでいると批判していた。
金スポット相場はニューヨーク時間午後4時9分現在、前日比46セント(0.1%未満)高の1オンス=2936.48ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は12.90ドル(0.4%)下げて2936.10ドルで引けた。
原題:S&P 500 Hits Record as Traders Brush Off Fed Signs: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Rise as Fed Minutes Reveal Discussion of QT Pause
Dollar Advances, Yen Overtakes Peers on Hawkish BOJ: Inside G-10
Oil Edges Higher in Aimless Trade as Supply Uncertainties Rise
Gold Hovers Near Record High as Trade Risks Boost Haven Appeal