Rita Nazareth
- ウォルマートの通期利益見通しが市場予想を下回る、銀行株も安い
- 金スポットは連日で最高値、米財務長官発言で伸び悩み
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20日のニューヨーク外国為替市場では円がドルに対して上昇し、昨年12月以来の高値を付けた。21日発表の日本の消費者物価指数(CPI)が日銀の追加利上げを支持する内容になるとの思惑から日本国債の利回りが上昇し、円買いが膨らんだ。円は一時、1ドル=149円40銭まで上昇した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1282.90 | -9.11 | -0.71% |
ドル/円 | ¥149.61 | -¥1.86 | -1.23% |
ユーロ/ドル | $1.0502 | $0.0079 | 0.76% |
米東部時間 | 16時51分 |
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オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場は、日銀が7月の会合までに追加利上げを決定することを84%の確率で織り込んでいる。今月初めの時点では約70%だった。市場は9月までの利上げを確実視している。
日本の最近の経済統計が、日銀による追加利上げ見通しを補強している。昨年10-12月の実質国内総生産(GDP)速報値は市場予想を上回り、12月の名目賃金は28年ぶりの高い伸びを記録した。
日銀の植田和男総裁は20日に石破茂首相と会談を行ったが、長期金利上昇については話題に出なかったと述べた。
TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、アレックス・ルー氏(シンガポール在勤)は「植田総裁と石破首相の会談は、恐らく円の強気派に十分な自信を与え、それがドルの対円での下げを加速させている」と指摘。「このところの円高と日本国債利回り上昇について議論しなかったことは、当局が一段の利上げにも違和感を抱かないと解釈できそうだ」と分析した。
サクソ・マーケッツのチーフ投資ストラテジスト、チャル・チャナナ氏は「あす発表されるCPIが予想を上回った場合、日銀の利上げ観測がさらに高まる可能性がある」と述べた。「148円65銭がドルの重要な支持線になる可能性があり、CPIが予想を上回った場合、この水準に達する可能性がある」と語った。
それでも、円は日本国内の個人投資家からの逆風に直面している。国内投資家は高いリターンを求めて海外株に投資しているが、国内ではインフレ調整後の金利が依然としてマイナスだ。円高は日銀が早期に金利を引き上げる理由を弱める可能性もある。
INGのシニアエコノミスト、ミン・ジュ・カン氏は「円が150円を超える水準で長期間維持されれば、日銀は次の利上げのタイミングについて再考せざるを得なくなるだろう」と指摘。「5月に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げを予想しているが、夏まで遅れる可能性もある」と話した。
米国株
米株式相場は反落。ウォルマートの通期利益見通しが市場予想を下回り、景気の原動力である個人消費に対する懸念が強まり、売りが出た。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 6117.52 | -26.63 | -0.43% |
ダウ工業株30種平均 | 44176.65 | -450.94 | -1.01% |
ナスダック総合指数 | 19962.36 | -93.89 | -0.47% |
ホリデーシーズンを終え、総合大手としては決算発表のトップバッターとなったウォルマートは6.5%安。 同社のジョン・デービッド・レイニー最高財務責任者(CFO)は「消費者の行動や世界経済、地政学的環境に関する不透明感はまだある」と述べた。14日に発表された1月の小売売上高は市場の予想以上に減少。消費の急減速を示唆していた。 銀行株も安い。JPモルガン・チェースとゴールドマン・サックス・グループはそれぞれ大幅安となった。
関連記事:ウォルマート、通期見通しが市場予想下回る-不透明感が重しに
ウォルマートのような小売業者は、景気が厳しい時期には業績が伸びる傾向にある。同社は新年当初には保守的な見通しを示す傾向もある。しかし、消費者は高止まりする物価や高い借り入れコストに直面しており、支出を支えるためにクレジットカードなどに依存する人が多く、不良債権が増えている。
ミラー・タバクのマット・メイリー氏は「ウォルマートのニュースは、消費者の現状についてさらに懸念を高めるものだ」と指摘。「すでに消費者信頼感を巡る指数は非常に失望される数値を示しており、先週の小売売上高も予想を大幅に下回るものだった。このため、今年の成長の強さについて疑問が生じている」と述べた。
Walmart Shares Get a Price Rollback Too
Before Thursday’s fall, Walmart stock had doubled in just over a year
Source: Bloomberg
関税からインフレ、地政学、バリュエーションに至るまで、さまざまなリスクに直面する市場に、こうした不確実性が影響を与えた。昨年20%余り上昇したS&P500種株価指数は、世界の他の主要株価指数に後れを取っており、新年入りしてから最高値を3度更新したものの、いずれも大幅な上昇には至っていない。
シティー・インデックスのアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「米国株がもっと魅力的なバリュエーションを回復するには、近く調整が必要になるかもしれない」と述べた。「目立った警告サインはまだ出ていないが、S&P500種の短期的な下降局面につながるような兆候には注意すべきだ」と語った。
消費関連銘柄が下落したほか、銀行株の下げもきつかった。バークレイズのジェーソン・ゴールドバーグ氏はウォルマートの業績見通しと、コンファレンスボードの景気先行指数の低下を懸念材料として挙げた。
ただ同氏は、銀行株もこのところ、かなりの動きを見せていたため、利益確定売りにつながった面もあると記述した。
米株式市場は転じて調整相場に入る可能性があると、ゴールドマン・サックス・グループのグローバルマーケット担当マネジングディレクター兼戦術スペシャリストのスコット・ルブナー氏は指摘した。リテール投資家と機関投資家の買いが失速しているという。
リテールトレーダーからの需要は今年、記録的なペースで米株式市場に積み上がっているが、これが3月の納税シーズンを控えて減速する見通しだという。年金基金からのフローも季節的なトレンドのために「燃料切れ」になり得ると、ルブナー氏は指摘。1月と2月は毎年、資産配分による恩恵で強い時期となるが、3月にマネーの流入は減速する傾向がある。
関連記事:ゴールドマンのルブナー氏、米株式市場の「調整ウオッチ」入りを宣言
米国債
米国債相場は中長期債を中心に続伸。ベッセント米財務長官は米国債の発行で長期債の割合を増やす措置は「まだ先のことだ」と述べた。
関連記事:ベッセント氏、中長期債の発行増「まだ先」-対ロシア制裁を調整も
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
米30年債利回り | 4.75% | -1.9 | -0.40% |
米10年債利回り | 4.51% | -2.7 | -0.60% |
米2年債利回り | 4.27% | 0.0 | 0.00% |
米東部時間 | 16時51分 |
原油
ニューヨーク原油相場は3営業日続伸。世界的な供給を巡る不透明感から、買いが続いた。ドルが下落したことも、ドル建てで取引される原油の妙味を高めた。
カザフスタンの主要パイプラインの混乱や、石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」が供給引き上げ開始の延期を検討しているとされるなど、需給引き締まりの見通しが強まっている。
ただし、価格は今月に入って狭いレンジの動きが継続。トランプ米大統領が実行を目指している一連の改革に対し、市場はますます鈍感になりつつある。
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ブライアン・ライゼン氏らロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)のアナリストは「レンジ相場が続く可能性が高い。ニュースに反応する動きが続くだろう」とリポートで指摘。「大きな材料を認識しないまま時間がさらに経過するにつれ、トレーダーは平均価格に近いポジションを取る傾向になると述べた。
米政府が発表した先週の原油在庫は463万バレル増加した。4週連続増となり、増加幅は業界団体やブルームバーグ端末ユーザーの予想より大きかった。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物3月限は、前日比32セント(0.4%)高い1バレル=72.57ドルで終了。3月限はこの日が最終取引だった。4月限は72.48ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント4月限は0.6%上げて76.48ドル。
金
金スポット相場は連日で最高値を更新したあと、上げ幅を縮小。米政府が金準備の評価替えを行うとの観測をベッセント財務長官が否定したことから、利益確定の動きが出た。
政府系ファンド(SWF)創設計画を巡り、ベッセント氏は米国の金準備を再評価することは「私の考えになかった」と述べた。同準備の価格を1973年に設定された1オンス=42ドルから、現在の市場価格に再評価するとの見方を退けたと、市場では受けとめられた。評価替えとなれば、政府は約7500億ドルの資金を手にすることになり、債券発行の必要性は後退する。
この案はトランプ大統領の経済顧問の間で真剣に検討されているものではないと、ブルームバーグは先週報じていた。
サクソバンクの商品戦略責任者、オレ・ハンセン氏は「利益確定の動きがやや見られる。恐らくベッセント氏のコメントが材料視された。しかし、直近の価格上昇を受けて市場が利益確定の口実を探していたことも大きい」と指摘。「全体として、下値が支えられていることに変わりはない。下げは限定的となる可能性がある」と述べた。
金スポット相場はニューヨーク時間午後3時20分現在、前日比3.44ドル(0.1%)高の1オンス=2936.83ドル。一時は0.7%高の2954.84ドルを付け、最高値を更新した。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は20.00ドル(0.7%)上げて2956.10ドルで引けた。
原題:Yen Advances Past 150 per Dollar as BOJ Rate-Hike Bets Ramp Up(抜粋)
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