▽エルドアン氏の野望、抑止力は市場だけ-世界は見て見ぬふりか
Selcan Hacaoglu
- 各国は政敵の逮捕に沈黙守る-トルコの戦略的重要性から非難出ず
- 市場は声上げる、トルコ債利回りは急上昇、株価は下落、リラは急落

トルコが週末にエルドアン大統領の政敵を逮捕・収監した際、数千人の市民が街頭に繰り出し抗議の声を上げた。対照的に静かだったのは、トルコの西側の同盟国だ。
北大西洋条約機構(NATO)で2番目に大きな軍を持つトルコの大統領で軍司令官でもあるエルドアン氏は、世界がトルコを必要としていることに賭けている。
安全保障について米国と欧州の足並みが乱れる中、エルドアン氏はウクライナのほか中東やアフリカの紛争地域で、陰の実力者としての地位を確立してきた。
欧州諸国からの幾つかの異論を除いて、23日にトルコの裁判所がイスタンブールのイマモール市長の正式逮捕・収監を決定したことに対する国際的な非難はほとんど聞かれなかった。
退任するドイツのショルツ首相は、数日前にイマモール氏が拘束された際に「気がめいる」と述べるにとどまった。米国務省は内政問題として取り合わなかった。

トルコ政府は、検察が政治的圧力の下で行動したわけではないと主張。しかし、エルドアン氏に異を唱えた批判者の多くは投獄されている。
今年に入ってからも、一連の捜査と逮捕が相次いでいる。しかし、イマモール氏のような知名度の高い人物の収監は前例がない。同氏は次期選挙でエルドアン氏の対立候補になると広く見なされている。
エルドアン氏は、トルコの戦略的重要性が、同国の民主主義の欠陥に対して西側諸国の目をつぶらせると考えているのだろう。今のところは同氏の思惑通りのようだ。

コンサルティング会社テネオの共同社長ウルファンゴ・ピッコリ氏は「ますます明らかになってきているのは、エルドアン氏がトルコを完全な独裁国家へと導こうとしていることだ」と述べた。

ウクライナでの戦争により、欧州のトルコへの依存は強まった。トルコの軍事的影響力と防衛能力は拡大しており、トランプ米大統領が欧州の安全保障における米国の役割を見直す中、貴重なものになっている。
現時点でエルドアン氏の野望に歯止めをかけられるのは市場だけかもしれない。
金融市場の不安定は、エルドアン氏が2023年半ばに再選を果たし非正統的な政策から転換して以降の経済的進展を脅かしている。反対派の弾圧は、外国資本を国内に呼び戻す取り組みの最近の進歩を覆すリスクがある。
先週イマモール氏が拘束されて以来、トルコ債利回りは急上昇し、株価は下落、リラは3%以上も急落した。
ワシントン近東政策研究所のトルコ研究プログラムのディレクター、ソネル・チャガプタイ氏は「現時点でトルコに関してエルドアン氏がコントロールできない要素であり、同氏に方針転換を迫ることができるのは、大規模な平和的デモと市場だけだ」と述べた。
原題:Erdogan Bets on World Turning a Blind Eye to Turmoil in Turkey(抜粋)