▽【米国市況】株は勢い失速、経済に黄信号-ドル下落し149円90銭付近

Rita Nazareth

  • 消費者信頼感4年ぶり低水準、エヌビディア除き大型ハイテク株上昇
  • 金ETFに資金流入、ウクライナが部分停戦履行を表明し原油反落

25日の米国株式相場は小じっかり。前日の買い勢いは失速した。貿易戦争から景気減速、インフレ高止まりに至るまで、さまざまなリスクを見極めようとする動きが出た。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5776.659.080.16%
ダウ工業株30種平均42587.504.180.01%
ナスダック総合指数18271.8683.270.46%

  引けにかけて大型ハイテク株に新たな買いが入り、S&P500種株価指数は辛うじてプラス圏で引けた。消費者信頼感指数が4年ぶりの水準に低下し、センチメントを圧迫した。一方で今年の利下げ見通しは強まっている。

Traders Search For Havens As US Stock Selloff Rattles Nerves
ニューヨーク証券取引所のトレーディングフロアPhotographer: Michael Nagle/Bloomberg

  株価が今後回復するのかどうかを巡り、市場の見方は分かれている。マックス・ケトナー氏率いるHSBCホールディングスのストラテジストらは、米株の投資判断をアンダーウエートに引き下げ、経済への不安をその根拠とした。一方でJPモルガン・チェースのイラン・ベナム氏は、関税措置の内容がより明らかになりつつあり、一部の主要リスクが軽減されたとして、ここ数週間に見られた戻り売りのスタンスを控えるよう助言した。

  ミラー・タバクのマット・メイリー氏は株式相場が売り浴びせの状態から持ち直したのは良いが、最悪期を過ぎたとの確信には至っていないと指摘。「言い換えれば、反発は調整後に通常見られる動きに過ぎないということだ」と述べた。

  シティー・インデックスのアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「センチメントは依然として慎重だ」と話す。「前日までの回復局面はやや行き過ぎたのかもしれないと、心配されている。最悪期は過ぎたと確信していない投資家が一定数いるのは明らかだ」と述べた。

  ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は0.5%上昇。大型ハイテク株は総じて上昇したが、エヌビディアだけは下落した。住宅建設大手のKBホームは売上高予想の下方修正が嫌気され、株価は下げた。AT&Tはルーメン・テクノロジーズの消費者向けファイバー事業買収に向けて、同社と協議に入っていると関係者が明らかにした。

S&P 500 Rally Wanes
S&P500種株価指数出所:ブルームバーグ

  コンファレンスボードとミシガン大学による最近の消費者調査は、いずれもトランプ氏の関税によるインフレ再燃への懸念から悪化傾向が鮮明となっている。企業は価格上昇と需要減退を警告しており、スタグフレーション(景気停滞下の物価上昇)とリセッション(景気後退)の可能性が高まっているとのエコノミスト予想と一致している。

  米国の消費者は「目に見えて疲弊」しており、それが今後株価を一段と圧迫しそうだと、UBSインベストメント・バンクのチーフ・ストラテジスト、バーヌ・バウェジャ氏が指摘した。

  バウェジャ氏は雇用や支出に関する見通し、消費者信頼感といった指標はいずれも警戒シグナルを発していると指摘。アナリストらが向こう3-4カ月の利益予想を下方修正する中、バウェジャ氏は、S&P500種が5300にまで下げるとの見通しを示した。

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「投資家と消費者、企業の間でセンチメントの悪化が続いている。経済政策を巡る不確実性の影響だ」と指摘。「関税とマクロ面の視界が良好になるまで、センチメントと信頼感は崩れやすい状態が続く」と述べた。

  ベスポーク・インベストメント・グループのストラテジストは「数週間前から市場のセンチメントにおけるフロス(泡)のような強気センチメントはすっかり絞り出されたことが見て取れる」と指摘した。

  最新の例として、25日発表の消費者信頼感統計で向こう1年で株価が下げるとの回答が10ポイント余り増加したことを挙げた。

  「このようにネガティブなセンチメントが急増した後の株式市場は、回復を始める傾向があり、しかもかなり急速に持ち直すケースが多い」と述べた。

Wall Street Expectations for US Stocks | Difference between highest and lowest S&P 500 target is 1,600 points
出所:ブルームバーグ

米国債

  米国債相場は朝方の下げから反転上昇した。弱い米消費者信頼感指数が短期債を中心に利回りを押し下げ、利回り曲線の傾斜をきつくした。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.66%-0.4-0.08%
米10年債利回り4.31%-2.1-0.49%
米2年債利回り4.02%-1.9-0.48%
  米東部時間16時52分

  トレーダーらは引き続き貿易戦争と経済への影響を見極める展開。2年債入札では強い需要が見られ、明日からの5年債、7年債入札を控え、買いの勢いが増した。

  金利スワップ市場はハト派にシフト。7月の連邦公開市場委員会(FOMC)までに28ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)、12月FOMCまでに約62bpの利下げを織り込んだ。

外為

  ドルは主要10通貨の大半に対して下落。特に対円で下げた。トランプ政権の貿易戦争が懸念される中、3月の米消費者信頼感指数は4年ぶりの水準に低下した。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1270.32-1.44-0.11%
ドル/円¥149.91-¥0.79-0.52%
ユーロ/ドル$1.0791-$0.0010-0.09%
  米東部時間16時52分

  主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、前日までの4営業日に続伸していた。ドルは月間ベースで約1年ぶりの大幅安となりそうだ。トランプ米大統領の関税政策で米景気拡大が脅かされていることが背景にある。

関連記事:ドル、月間で2023年来の大幅安-トランプ関税政策が一転マイナス要因

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのシニア・マーケッツ・ストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は「消費者信頼感指数が描き出したのは、ますます支出を渋るようになった消費者の姿であり、ドルに重要な向かい風を吹き付けている」と述べた。

  ING銀行の通貨ストラテジスト、フランチェスコ・ペソレ氏は「きょうのドルは下向きリスクばかりが目立つ」と話す。関税発表の4月2日が近づくため、ドルは週末にかけて上昇を再開する可能性があるとも指摘した。「米マクロ経済に関する市場の悲観は、その大部分が弱い消費者統計に由来する」と述べた。

  円は一時0.8%上昇し1ドル=149円55銭を付けた。林芳正官房長官は物価高に対応するため2024年度補正予算や25年度予算に盛り込んだ政策を総動員すると述べた。会見に先立ち、石破茂首相が公明党の斉藤鉄夫代表に、予算成立後に強力な物価高対策を打ち出す考えを伝えたと、共同通信が報じていた。

  日本銀行の植田和男総裁は保有ETF(上場投資信託)について、市場などの情勢を勘案しつつ、適正な対価によること、日銀の損失を極力回避すること、市場に攪乱的な影響を与えないように配慮することを考慮して処分案を作成すると語った。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は反落。ウクライナのゼレンスキー大統領が部分停戦の即時履行を表明したことで、ロシア産原油が近く市場に戻るとの見方が強まった。前日までは4営業日続伸と、約3カ月ぶりの長期連続高となっていた。

  ウクライナによる部分停戦の履行表明のほか、ホワイトハウスは、ロシアが黒海の安全な航行とエネルギー施設への攻撃禁止履行に同意したと発表した。

関連記事:ロシア、ウクライナが黒海の停戦に合意と米ホワイトハウス発表 (1)

  ロシアとウクライナの間で停戦が実現すれば、米国と欧州がロシア石油業界に科している制裁措置の緩和につながると見込まれている。ただ市場の反応は限定的で、世界の石油供給に大きく、ないし即座に影響を与えるのかを巡り、トレーダーが懐疑的であることを示唆している。2月には、ロシアの原油輸出は5カ月ぶり高水準に達した。原油収入は、ウクライナでの戦争を続けるロシアにとって重要な資金源となっている。

Oil Falls on Truce Between Russia and Ukraine | WTI slips on prospect of eased sanctions on Moscow's crude
WTI原油先物出所:ICE、NYMEX

  ラピダン・エナジーのアナリスト、フェルナンド・フェレイラ氏は、今回の停戦協議で、ロシア産原油や精製品の一部買い手のリスクが低下する可能性があるとしつつ、制裁緩和は世界の供給見通しよりもロシアの財政に大きな影響を及ぼしそうだと分析した。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は、11セント(0.2%)安の1バレル=69ドルちょうどで引けた。ロンドンICEの北海ブレント5月限は2セント上昇し73.02ドル。

  金スポット相場は上昇。金を裏付けとした上場投資信託(ETF)への大規模な流入が続いた。

  ブルームバーグがまとめたデータによると、金ETFを通じた金保有は今年に入りこれまで約154トン増加している。

  金ETFは過去4年間、継続的な資金流出に見舞われてきた。高金利により、欧米の投資家としては金よりも現金を保有する方が妙味があったためだ。だが今年に入りこの傾向は反転し、金価格を支えている。

Gold-Backed ETFs Rebound in 1Q as Price Rally
金を裏付けとする上場投資信託(ETF)の金保有量(左軸)と金スポット相場(右軸)出所:ブルームバーグ

  金相場は年初以降に15%上昇。貿易戦争の激化で市場が動揺し、安全資産としての金の需要が高まっている。

  金スポット相場はニューヨーク時間午後3時20分現在、前日比8.20ドル(0.3%)高の1オンス=3019.24ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は10.30ドル(0.3%)上昇し3054.30ドルで引けた。

原題:Stock Rally Wanes as Economic Signals Spur Caution: Markets Wrap(抜粋)

原題:Treasuries Rally, Led by Front-End, as Consumer Sentiment Slides(抜粋)

原題:Dollar Weakens After US Consumer Confidence Drops: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Dips as Traders Assess Impact of Ceasefire on Russian Flows(抜粋)

原題:Gold Climbs as Bullion-Backed ETFs Add to Holdings This Year(抜粋)