石破総理がきのう公明党の斉藤代表と党首会談を行った。NHKによると総理は「新年度予算案が成立したあと、コメやガソリンの価格高騰などを念頭に、強力な物価高対策を打ち出す考えを伝えた」とのこと。いまさら総理としての適格性に疑問を呈しても仕方ないと思いつつ、「予算成立を条件に辞任する」と言った方が石破氏の人格に傷がつかないのではないか、そんな気がした。物価高騰はいま始まったわけではない。ずっと前から問題になっている。予算編成の過程で当然物価対策を盛り込むのが政府としてやるべき仕事だ。「そんなことは考えていなかった」、石破氏の発言を素直に解釈すればそういうことになる。国民民主党の要求を受け入れ税額控除を178万円に引き上げるのも、ガソリンに課税しているトリガー条項を廃止するのも物価対策だ。それをやらずに物価対策とは、何をいまさらと多くの国民は感じるはずだ。

この発言を受けて林官房長官は「石破総理は、新たな予算措置を打ち出すということを述べたのではなく、新年度予算案などに盛り込んだあらゆる政策を総動員し、物価動向が家計や事業活動に与える影響に細心の注意を払いつつ、物価高の克服に取り組んでいくという決意を示したものだ」と解説する。官房長官の立場上そう言わざるを得ないのは理解できる。だが総理の本心はそこにはない。内閣支持率がどんなに下がっても、「やっとの思いで掴んだ総理の座だ、簡単には手放せない。強力な物価対策といえば国民の理解を得られるのではないか」、おそらくそんな心境だったのではないか。これが有権者の受け止め方だ。自民党の佐藤幹事長代理は「予算審議の現場を動かしている人間からするとよけいな発言だ」と手厳しい。自民党の幹部とは思えないほどの辛辣さ。現場で汗を流している議員には耐えられない発言だろう。何のために汗をかいているのだ、現場の悲鳴が聞こえてくる。

野党はさらに厳しい。立憲民主党の大串代表代行は記者団に対し「国会で審議をしている新年度予算案の内容が不十分だということをみずから露呈したことになる。極めて問題のある発言だ」と述べている。その通りだろう。総理に強力な物価対策をやる覚悟があるなら、とりあえず1カ月程度の暫定予算を組み、4月末までに来年度予算の3度目の修正をおこなったらどうだろうか。所得控除を178万円に引き上げ、所得制限を撤廃する。トリガー条項も即座に廃止する。これをやれば少しは「国民に寄り添う総理」として評価されるかもしれない。だが、今度は自民党が受け入れない。要するに総理の行く道は八方塞がれているのだ。手のひら返しに加え2000万円の活動費の支給、補正予算は乗り越えたものの、通常国会では二転三転とブレまくる。そのうえの商品券問題に今度は予算案無視の物価対策。やることなすこと裏目だ。どうしてこうなる?いまさら考えることもないだろう。