▽ベネズエラ産原油に「二次的関税」、トランプ氏の新たな貿易手段に

Daniel Flatley

  • ベネズエラ産原油・ガス購入国に25%の関税賦課、大統領に署名
  • トランプ氏、関税と二次的制裁を組み合わせて新たな手段を考案

トランプ米大統領はベネズエラ産原油・ガス購入国への25%の関税発動を発表することで、「二次的関税」という新たな経済的手段を打ち出した。

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  大統領令によって正式に確認された今回の措置では、すでに米国の厳しい制裁下にあるベネズエラから原油・ガスを購入する国々は、米国との貿易において25%の関税を課される可能性がある。

  「これは経済戦争における新たな概念だ」と話すのは、ライス大学ベイカー公共政策研究所で中南米エネルギー政策を担当するフランシスコ・モナルディ氏だ。「どのようにして強制力を持たせるのかは、もちろん不透明だ」という。

  トランプ氏は今回の措置で、関税と「二次的制裁」(制裁対象と取引する第三国や個人への金融制裁)を組み合わせた新たな手段を打ち出したように見える。二次的関税の対象は、ベネズエラ産原油の取引先として知られる米国、スペイン、インド、そして闇市場まで多岐にわたる可能性がある。

  このうち米国、スペイン、インドはそれぞれ石油大手シェブロンレプソルリライアンス・インダストリーズが保有する正式なライセンスの下で取引を行っている。一方、闇市場での取引の中心は中国だ。

  「ベネズエラ産原油の闇市場は実質的に中国が担っており、今回の措置で最大の標的となっているのは中国だ」と、前出のモナルディ氏はみている。「中国に矛先を向ける意図がなければ、二次的関税を導入する必要はなかっただろう」と指摘する。

  トランプ氏が署名した大統領令では、ベネズエラ産原油を直接または間接的に輸入する国に対し、4月2日から25%の関税を課すかどうかの判断をルビオ国務長官に委ねている。

  大統領令に二次的関税の対象国が明確に記載されているわけではないが、中国に関税が課された場合には、それが中国本土にとどまらず、香港とマカオにも適用されることが明記されている。ベネズエラを除いて、名指しされたのは中国だけだ。

  トランプ氏はかねて金融制裁の発動に否定的な姿勢を示しており、今回の措置はトランプ氏にとっては理にかなったものだ、と専門家は指摘している。トランプ氏は制裁が脱ドル化を招くと懸念する一方、関税は交渉手段としても、歳入を得る手段としても利用できると考えている。

  ベッセント財務長官はトランプ氏の関税活用について、主に3つのカテゴリーに分類できると説明している。交渉におけるレバレッジ(交渉材料)、2期目で目指す減税延長のための原資確保、米国に優位な形で貿易不均衡を是正する手段の3つだ。

  米国家安全保障会議(NSC)の元シニアディレクター(国際経済・競争力担当)、ピーター・ハレル氏は「トランプ氏にとって関税の利点は明確だ。相手国が要求に屈せず、実際に関税を発動することになっても、少なくとも『現金収入』が得られるという点に価値を見出している」と話した。

Trump Hails Hyundai Plan For US Expansion As Vindicating Tariffs
左からジョンソン下院議長、トランプ氏、ランドリー・ルイジアナ州知事Photographer: Samuel Corum/Sipa/Bloomberg

原題:Trump’s Threat of ‘Secondary Tariffs’ Invents New Trade Tool (1)(抜粋)