Rita Nazareth
- エヌビディアとテスラ、約6%下落-米政府間もなく自動車関税発表
- 米国債利回りが上昇しドルがつれ高、原油は在庫統計受け反発

26日の米国株式市場では大型ハイテク株が売りを浴び、ウォール街の比較的平和な日々は3営業日で打ち切られた。貿易戦争が経済とインフレに与える影響が懸念され、リスク意欲を冷え込ませている。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 5712.20 | -64.45 | -1.12% |
ダウ工業株30種平均 | 42454.79 | -132.71 | -0.31% |
ナスダック総合指数 | 17899.02 | -372.84 | -2.04% |
この日の相場を下押ししたのは「マグニフィセントセブン」と呼ばれるハイテク7強で、四半期ベースでは2022年以来の大幅な下落に向かっている。エヌビディアとテスラはいずれも6%近く下げた。マイクロソフトも下落。米国と欧州で計画されていた2ギガワット規模の新しいデータセンタープロジェクトから撤退したと、TDカウエンのアナリストが指摘した。ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は約2%下げた。
トランプ米大統領はこの日、自動車関税を発表する。対象の広い関税の発動が予定されている来週を控え、貿易相手国との対立をさらに深める。セントルイス連銀のムサレム総裁は関税による影響が一時的なものにとどまるかどうかは不透明だと述べ、その二次的影響によって金融当局が金利をより長期にわたって据え置く可能性があるとの見解を示した。

ペッパーストーンのストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は「関税に関する不確実性は今でも信じがたいほどに高く、企業も消費者も翌日より先の計画を立てるのは極めて困難だ。市場参加者による適切なリスク織り込みは、ほぼ不可能な状況だ」と述べた。
ハイテク7強で構成するブルームバーグの「マグニフィセントセブン」指数は3%安。小型株で構成するラッセル2000指数は1%下落した。

ベヌ・クリシュナ氏率いるバークレイズのストラテジストは、今年のS&P500種目標水準を6600から5900に引き下げた。関税と調査データが年内いっぱいは株式市場を圧迫する見通しだという。
フォレックス・ドット・コムのマシュー・ウェラー氏は「『市場は不確実性を嫌う』という表現があるが、関税発表を控えた曖昧さがすでにリスクセンチメントを悪化させているのは間違いない。従って、いったん発表されてしまえば、リスク資産やドルに安堵の買いが入り、小幅上昇する可能性もある」と述べた。
一方で、さらなる関税が発動される可能性と、今後数カ月においては交渉材料として懲罰的関税が用いられる可能性が高いことを挙げ、リスクラリーが生じたとしても短命に終わるかもしれないともウェラー氏は指摘。経済を揺さぶるような政策が絶え間なく打ち出されることはもうないと、投資家が確信する必要があると話した。
世界的な貿易戦争による経済的影響への懸念から、米株式市場の流動性が低下している。市場全体のボラティリティーを高める可能性があり、機関投資家にとって頭痛の種となっている。
ドイツ銀行がまとめたデータによると、S&P500種株価指数先物(中心限月)の流動性は、2年ぶり低水準にある。
ジャニー・モンゴメリー・スコットのダン・ワントロブスキ氏は「地政学的環境におけるマクロの不確実性と、国内流動性の状況シフトという組み合わせに、投資家は今年も苦戦を強いられるかもしれない」と話す。「基調的な流動性状況に著しい変化が生じ、向こう数カ月のリスク市場に影響を及ぼしかねないとの懸念は続いている」と述べた。
同氏はテクニカル分析上の留意点として、3月安値の後に見られた「売られ過ぎからの反発」が「やや鈍く」なり始めており、回復の流れが脅かされていると指摘した。
「目先は慎重な姿勢を崩さず、確実な底入れの確認作業を続けていく」と述べた。
米国債
米国債相場は軒並み下落。700億ドルの5年債入札後も軟調は変わらなかった。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.70% | 4.2 | 0.91% |
米10年債利回り | 4.35% | 3.7 | 0.85% |
米2年債利回り | 4.01% | 0.1 | 0.03% |
米東部時間 | 16時43分 |
長期ゾーンではドル・スワップ・スプレッドが急激に縮小し、2月上旬に見られた規制緩和を見込んだ拡大トレードが巻き戻された。担保付翌日物調達金利(SOFR)オプションでは、今年上期の米金利据え置きを見込んだ需要が引き続き見られる。
午後の取引で株式市場の軟調が鮮明になる中でも、米国債は総じて下げ基調が続いた。5年債入札ではプライマリーディーラーの落札比率が前回より高い13.2%だった。直接入札者の落札比率は11%に低下した一方、間接入札者の落札比率は75.8%に上昇した。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)の金利ストラテジストらは、今年末の米国債利回り予想を全年限にわたって引き下げた。短期的な米経済の軟化と、米金融緩和の可能性に対する市場の織り込みが進んでいることを理由に挙げた。
BofAのマーク・カバナ氏らは「市場が景気下振れリスクの高まりを織り込むことを反映した」と26日付リポートに記した。
外為
ドルは主要10通貨全てに対して上昇。トランプ大統領が26日に自動車関税を発表することが明らかになり、米国債利回りが上昇し、ドルもつれ高となった。英インフレ率が予想外に低下したことを受け、ポンドは一段安となった。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1274.09 | 3.77 | 0.30% |
ドル/円 | ¥150.54 | ¥0.63 | 0.42% |
ユーロ/ドル | $1.0756 | -$0.0035 | -0.32% |
米東部時間 | 16時43分 |
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、3月初め以来の高水準に達した。
これより先の発言でトランプ氏は関税の免除措置に消極的な姿勢を見せたほか、数週間内に銅に関税を賦課する可能性を示唆していた。
INGの市場部門責任者、クリス・ターナー氏は来週発表される米関税政策について「世界の貿易システムを再構築する『マールアラーゴ』型構想」の一環として受け止めるのが適切だろうと述べ、ドルは当初の反応として上昇する可能性があると続けた。一方で「ドルの取引は比較的狭いレンジにとどまりながら、追加利下げを急いでいない米金融当局から若干の口先支援を得る可能性もある」との見方を示した。
ドルは対円で一時150円75銭まで上昇した。
日本銀行の植田和男総裁は経済・物価見通しが実現していけば利上げで緩和度合いを調整していく方針を改めて表明。基調物価が見通しから上振れる場合はさらに緩和度合いの調整を強める考えを示した。
日銀の小枝淳子審議委員はその後、「賃金・物価の好循環のステップは確認されてきている」と述べ、現状は日銀が重視する基調的な物価上昇率よりも足元のインフレ率の方が高いと指摘した。
ブラウン・ブラザーズ・ハリマンのウィン・シン、エリアス・ハダッド両ストラテジストは「日銀の利上げ期待が著しく後退しない限り、ドル・円が現在151円70銭近辺にある200日移動平均の主要抵抗線を持続的に上抜ける可能性は低いとみている」とリポートで述べた。
原油
ニューヨーク原油先物相場は反発。米政府の統計を受けて近く供給が逼迫(ひっぱく)するとの観測が強まり、市場のファンダメンタルズに対する強気な見方が広がった。
米エネルギー情報局の週間在庫統計によれば、原油在庫は先週334万バレル減少し、約1カ月ぶりの低水準。ガソリン在庫も減った。

この相場上昇は、月初に弱気ムードに傾いていた市場において、センチメントが急反転したことを浮き彫りにしている。トランプ大統領がイラン産原油の輸出に対する圧力を強める中、トレーダーは強気の原油オプションの購入を増やしている。来週にはさらなる関税が発効する見通しで、それにはベネズエラ産の石油・ガスを購入する国に対する関税賦課が含まれる。
シティー・インデックスの市場アナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は、原油価格は「近い将来における供給逼迫の見通しに支えられており、需要に対する懸念は二の次になっている」と述べた。
ブリッジトン・リサーチ・グループのデータによると、価格の上昇基調を受けて、商品投資顧問業者(CTA)は26日、ブレント原油に関してネットロングに転じた。WTIのポジションは54%がショート、17日時点では82%がショートだったという。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比65セント(0.9%)高の1バレル=69.65ドルで終了。終値としては今月に入り最も高い水準となった。ロンドンICEの北海ブレント5月限は1.1%上昇の73.79ドル。
金
金スポット相場はほぼ変わらず。過去最高値付近での推移となった。トランプ米大統領の関税措置を巡り不透明感が続く中、投資家は明確な方向性を探ろうとしている。
ロシアとウクライナはそれぞれ、エネルギーインフラへの攻撃禁止を履行するメカニズムの策定と、黒海での停戦に合意したと米ホワイトハウスが25日に発表した。ロシア大統領府も、黒海の安全な航行について合意があったことを確認。ただ、その履行は農業製品輸出に関連する銀行や企業の制裁緩和が条件になるとくぎを刺した。
欧州での敵対姿勢の後退は、安全資産である金の売りを引き起こす可能性がある。だがトランプ氏の大統領就任以降、地政学的な情勢は急速に変化しており、多くの投資家は依然として警戒感を抱いている。
金スポット相場はニューヨーク時間午後2時27分現在、51セント(0.1%未満)上昇の1オンス=3020.60ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は2ドル(0.1%)安の3052.30ドルで引けた。
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