▽【米国市況】景気不安で株大幅安、ドルも下げ150円割れ-国債上昇

Rita Nazareth

個人消費の弱さとインフレ加速を懸念、金はまた最高値更新

  • 四半期末の接近も影響、リスクオフで株から国債に資金逃避

28日の米国株式相場は大幅安。米経済の主な原動力である個人消費に弱さの兆候が表面化したほか、貿易戦争たけなわとなる中でインフレがさらに加速する可能性が懸念されている。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数5580.94-112.37-1.97%
ダウ工業株30種平均41583.90-715.80-1.69%
ナスダック総合指数17322.99-481.04-2.70%

  四半期末まで残すところ1営業日となり、S&P500種株価指数は四半期ベースで2022年以来の大幅安に向かっている。経済データは消費者マインドの悪化と、長期インフレ期待の上昇を示した。来週の大型関税発動を控えた消費者の買い控えと物価上昇も、別の統計に示された。ハイテク7強で構成するブルームバーグの「マグニフィセント7」指数は3.5%下落した。

Traders Search For Havens As US Stock Selloff Rattles Nerves
ニューヨーク証券取引所(NYSE)Photographer: Michael Nagle/Bloomberg

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は、景気が目に見えて減速する中でインフレが高止まりすることが最大の心配だと話す。

  「このリスクは現時点では基本シナリオではないかもしれないが、今後その勢いが増せば、投資家心理にさらに重くのしかかる可能性がある。しかし、経済がさらに悪化しない限り、スタグフレーションのシナリオに飛びつくには時期尚早だ」と述べた。

  ナスダック総合指数は今月少なくとも5回は、2%以上の下げを記録。ベスポーク・インベストメント・グループによれば、これは弱気相場だった2022年6月以来の頻度。大型ハイテク株は軒並み下落。アマゾン・ドット・コムとアルファベットはいずれも4%余り下げた。ヨガウエアメーカーのルルレモン・アスレティカは14%の大幅安。売上高見通しが市場予想を下回ったほか、個人消費の先行きに対する懸念を示した。

S&P 500 Is Set for Its Worst Quarter Since 2022
S&P500種株価指数の四半期騰落出所:ブルームバーグ

  トランプ米大統領の関税政策が拡大するにつれ、消費者は関税引き上げによる物価高への懸念を強めている。コスト上昇が長期化すれば、家計は裁量支出を抑制する可能性があり、景気全般に影響が及ぶ恐れもある。

  ラザード・アセット・マネジメントのデービッド・アルカリー氏は個人消費支出(PCE)統計について、「新しい関税など政策変更の影響がこの先数カ月で表面化するだろうが、きょうのデータは多くの市場関係者が注目する典型的なパターンを示した。つまり予想より弱い支出と、予想より強いインフレだ」と述べた。

  プランテ・モラン・ファイナンシャル・アドバイザーズのジム・ベアード氏は「先行きが見えない状態では計画を立てるのは難しい」と話す。「不確実性が高まる中、消費者は厳しい決断を下すしかない。現時点でインフレは、消費者にとって重要かつ深まりつつある懸念材料として再浮上している」と述べた。

   エコノミストは今年の米経済成長見通しを下方修正した。トランプ政権の変化し続ける通商政策によって不確実性が高まる中、個人消費が軟化し、資本投資が一段と限定的になると想定している。

  ブルームバーグが実施した最新のエコノミスト調査によると、2025年の国内総生産(GDP)成長率見通しは2%となった。一方、インフレ率は米金融当局の目標値である2%を上回る水準で推移し、年末時点のPCEコア価格指数の予想は2.8%。

米国債

  米国債利回りは大幅低下。ミシガン大学の消費者マインド統計やアトランタ連銀の予測モデルであるGDPナウなど、経済統計が懸念され、株式から債券へとマネーが逃避した。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.63%-8.8-1.87%
米10年債利回り4.25%-10.6-2.44%
米2年債利回り3.91%-8.2-2.06%
  米東部時間16時52分

  短期債利回りは今年最低水準に接近。金融政策見通しを反映するオーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)取引は、9月までに2度の0.25ポイント利下げを織り込んでいる。26日の引け時点では、10月までの織り込みだった。週明けの四半期末に関連した資金フローと、4月2日に発動が予定されている関税も影響した。

  BTGパクチュアル・アセット・マネジメントのマネジングパートナー、ジョン・ファス氏は「景気が失速する中で物価が上昇するというのが消費者の心配だ」と述べた。

Treasury Curve Steepens as Long-Maturity Yields Climb
5-30年債利回りスプレッド出所:ブルームバーグ

  4月2日の「相互関税」発動を控え、リスク低減に動く投資家もいる。関税はインフレを加速させ、世界経済の成長を損なうとアナリストはみている。

  ソーンバーグ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、クリスチャン・ホフマン氏は国債需要を喚起している要因として「センチメントの悪化と、さえない企業収益、そして世界関税戦争の次章を控えた心配」を挙げた。「インフレは望ましい水準より高く、消費者の気持ちとしてはさらに高く感じられている」と述べた。

外為

  ドルは円とユーロに対して下落。PCE統計で予想を下回る消費の伸びとインフレ加速が示された。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1271.87-1.43-0.11%
ドル/円¥149.87-¥1.18-0.78%
ユーロ/ドル$1.0830$0.00290.27%
  米東部時間16時51分

  マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏は「統計の中でもトレーダーの関心は主に個人支出に向けられていたようだ。個人支出は市場予想に届かず、個人所得の伸びを大きく下回った。米景気が減速しつつある兆しと見受けられ、それはトランプ政権発足後3カ月の特徴といえる関税バトルが始まって以降、市場が心配してきたことだ」と指摘。「前月の支出と所得が下方修正されたことも、警戒要因になっている。しかし為替市場のフローはかなり落ち着いており、依然として若干のドル・ポジティブが続いている。それは月末および四半期末要因によるものだが、この四半期はドルにとってはさえない展開だった」と続けた。

  キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、ジョナス・ゴルターマン氏は「今年のドルは苦しいスタートを切ったが、それでも(名目の)ドル指数や実質の貿易加重ベースでみた長期平均を今も大きく上回っている」とリポートで指摘。ドルは目先、持ち直すと同氏は予想するものの、「中期的な確率を比べると、ドルに有利ではない。最近の株式相場反落が、米国例外主義の終了開始を告げたことが後に分かれば、ドルには大きな下落余地があり得るだろう」と述べた。

  円は1ドル=149円69銭まで上昇する場面があった。東京都区部消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は、3月に上昇率が前月から拡大。事前予想を上回る伸びで、市場の追加利上げ観測を後押ししそうだ。

  フランスとスペインの消費者物価指数(CPI)は予想を下回った。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は3日ぶり反落。トランプ米政権による関税政策がエネルギー需要を落ち込ませるとの懸念が広がった。

  この日は米国株が下げ、原油も連れ安となった。ただ週間ベースでは3週続伸。近い将来の供給過剰を巡る懸念が和らいでいる。

Oil Rises for Third Straight Week | Market is bracing for Trump Tariffs
WTI先物週間騰落出所:NYMEX

  BOKファイナンシャル・セキュリティーズのシニアバイスプレジデント、デニス・キスラー氏は「米国株は苦戦している。米国で製造されない自動車に対する関税が発動される中、大半のトレーダーは中長期的な需要に対する懸念を抱いている」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物5月限は前日比56セント(0.8%)安の1バレル=69.36ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は0.5%下げて73.63ドル。

  金スポット相場は続伸し、過去最高値を更新した。トランプ米大統領が自動車に対する輸入関税を発表したことで、貿易戦争が拡大するとの懸念が広がっている。

  金スポットは一時1%高の1オンス=3086.82ドルとなり、前日に付けたそれまでの最高値を上回った。週間ベースでは4週続伸。

  金価格は今年に入って約17%上昇しており、過去最高値を少なくとも15回更新した。地政学やマクロ経済の不確実性が高まる状況にあって、中央銀行による買いと安全資産としての需要が価格上昇を後押ししている。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時43分現在、前日比17.43ドル(0.6%)高の1オンス=3074.72ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は23.40ドル(0.8%)上昇し3114.30ドルで引けた。

原題:S&P 500 Sinks 2% as Economic Fears Spur Bond Rally: Markets Wrap(抜粋)

原題:Treasuries Surge as Data Stoke Economic Fears and Stocks Tumble(抜粋)

原題:Treasuries Soar Amid Mounting Economic Anxiety Into Quarter-End(抜粋)

原題:Dollar Falls on Slowing Personal Spending and PCE: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Falls as Trump’s Trade War Stokes Concerns Demand May Drop(抜粋)

原題:Gold Rises to Record as Trade-War Concerns Drive Haven Demand(抜粋)