
【ワシントン=高見浩輔】トランプ米政権の高官らが高関税を導入する理由に戦争への備えを挙げる場面が目立っている。政権は2日に大規模な高関税政策を公表する見通し。専門家の多くが経済的な合理性に疑問を投げかけるなか、鉄鋼や自動車など軍事に関わる製造業の強化を反論材料にしている。
ナバロ大統領上級顧問は3月28日、米CNBCで「四輪駆動車や戦車、トラックを製造する自動車産業の力なくして第2次世界大戦での勝利は成し遂げられなかった」と輸入自動車への関税で産業を保護する意義を説明した。
米国の市場で売られる車のうち米国製のエンジンは19%で、エンジンと変速機の50%は日本とドイツ製だと問題視した。「米国はほかの地域から輸入した部品を組み立てるだけの工場に変わってしまった」と述べ、部品を含めた高関税の必要性を訴えた。
3月12日に発動した鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税についても7日にケビン・ハセット国家経済会議(NEC)委員長が「第2次世界大戦で米国が同盟国を支援できたのは、米国が鉄鋼製品を製造していたおかげだ」と記者団に説明した。
大統領経済諮問委員会(CEA)のスティーブン・ミラン委員長は2月の指名公聴会で「経済学者は国家安全保障の問題を軽視することがあまりにも多い」と不満を漏らした。高関税で貿易赤字の縮小とともに防衛産業の強化を進める構想を説明した。
トランプ政権が高関税にこだわる理由は複数ある。安価な輸入品を防いで大統領選での激戦州に多い製造業の雇用を守ったり、税収の増加を財政改善につなげたりするほか、高関税を脅しとして隣国に国境警備の強化を迫る道具としても使う。
なかでもナバロ氏らホワイトハウス内でトランプ氏に近い経済チームに国防の観点から関税の必要性を訴える言動が目立つ。市場は高関税が米国の物価を押し上げ、景気にブレーキをかけると懸念している。高関税が中長期的に米国内の製造業強化につながるかどうかも疑問視する声は少なくない。
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