Augusta Saraiva
- 3月の非農業部門雇用者数は22.8万人増-市場予想14万人増
- 失業率4.2%に上昇、予想4.1%-平均時給は前月比0.3%増
3月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが市場予想の全てを上回った。トランプ政権が打ち出した大規模な関税措置が世界経済に影響を及ぼし始める前の時点で、労働市場が底堅かったことが示された。
キーポイント |
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・非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比22万8000人増 ・予想中央値は14万人増 ・前月は11万7000人増(速報値15万1000人増)に下方修正 ・家計調査に基づく失業率は4.2%に上昇-前月4.1% ・市場予想は4.1% |
非農業部門雇用者数は1、2月分がいずれも幾分、下方修正された。

予想を上回る雇用者数の伸びは、通常なら市場関係者の楽観度合いを高め、相場を押し上げる方向に働き得るが、トランプ大統領の大規模関税に関心が移る中でそうしたムードは乏しい。
米国株は大幅続落。米国債利回りも大幅に低下している。
3月雇用統計の細部は、雇用者数の伸びが一時的要因を含んでいることを示唆する。娯楽・ホスピタリティーの雇用は増えたが、今年に入ってからの例年にない悪天候からの持ち直しである可能性が高い。
前月に減少していた小売りも増加に転じたが、米スーパーマーケット・チェーンのクローガーで発生した従業員1万人のストライキが終了したことなどを反映している。
運輸・倉庫での雇用増は、関税措置の発動前に企業が輸入を増やす駆け込み需要を映していると、一部エコノミストは指摘。このほか、ヘルスケアなどが大きく増加した。
連邦政府職員
連邦政府職員は2022年以降で初めて2カ月連続の減少となった。政府効率化省(DOGE)が連邦職員の削減計画を進めている。統計発表元の労働統計局は、有給で仕事を休んでいる職員や退職手当を受け取っている職員については雇用状態にあると見なしている。
再就職あっせん会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスによると、計画されている連邦政府の職員・契約職員のレイオフ数は過去2カ月で28万人余りに上った。
関連記事:DOGEによるレイオフ、2カ月で28万人上回る-チャレンジャー統計
DOGEの計画に伴う雇用減は、関連部門への波及分も含め、年末までに50万人を超える可能性があると試算するエコノミストもいる。また、移民が国境を越える動きが事実上止まる中、トランプ政権の移民政策が労働市場に与える影響も注目されている。
関連記事:米雇用市場、迫る50万人減の足音-DOGE政府改革は民間にも波及へ
3月は家計調査で集計された就業者数が増加に転じた。2月は約1年ぶりの大幅減となっていた。
失業率は上昇したが、小数2桁まで見ると4.14%から4.15%への上昇に過ぎない。要因は複数あり、一つは労働力人口に加わる人が増えたことで、これは確保できていない人材を採用したい雇用主にはプラスだ。一方、恒久的に仕事を失った人が増えたという側面もある。
労働市場に新たに参入したが職を見つけられない人の数は、8年ぶりの高水準となった。複数の仕事を掛け持ちする人が雇用者全体に占める割合は09年以来の高い水準。自発的離職者の数は約1年ぶりの大幅な落ち込みとなった。
労働参加率は62.5%と、前月(62.4%)から小幅に上昇。24歳以下の参加率上昇が全体をけん引した。働き盛り世代の25-54歳では低下し、この1年余りの最低水準となった。
平均時給は前月比0.3%増。前月(0.2%増)から加速し、市場予想と一致した。前年同月比では3.8%増で、前月(4%増)から鈍化。昨年7月以来の低い伸びにとどまった。
サラ・ハウス氏らウェルズ・ファーゴのエコノミストは「米労働市場の見通しは、1カ月前に比べて楽観度合いが低下している」とリポートで指摘。「労働需要が冷え込みつつある傾向は、今回のデータで既に兆候が示されている」とし、トランプ氏による今週の関税発表を受けてそうした論拠の説得力は増したと述べた。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Hiring Picks Up, Showcasing Solid Job Market Ahead of Tariffs(抜粋)