▽米財務長官、関税による景気後退リスクを否定-強気の姿勢示す

Shawn Donnan

  • 関税は必要、景気後退織り込む理由見当たらない-ベッセント長官
  • 米消費者への大きな影響は予想せず-ハセットNEC委員長
Treasury Secretary Scott Bessent downplayed concerns that the tariff barrage will stoke inflation.
Treasury Secretary Scott Bessent downplayed concerns that the tariff barrage will stoke inflation. Photographer: Al Drago/Bloomberg

ベッセント米財務長官は、新たな関税は必要な措置だと主張し、関税が米経済のリセッション(景気後退)を招くとの見方を否定した。関税措置を受けて世界の金融市場が売り浴びせに直面する中、強気の姿勢を示した。

  ベッセント長官は6日、NBCニュースの番組「ミート・ザ・プレス」で、「リセッションを織り込まなければならない理由は見当たらない」と語った。 

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ベッセント財務長官(右)とラトニック商務長官Photographer: Chris Kleponis/CNP/Bloomberg

  ベッセント氏は、先週発表された広範な関税措置を巡りトランプ大統領に撤回の意思があるという認識は示唆しなかった。50カ国余りが交渉を求めて政権に連絡を取ってきたとしつつ、いかなる交渉も時間がかかると述べた。

  米国の立場からすれば、他の国々は「長い間、たちの悪い行動を取ってきた」と言えるとし、こうした問題は数日や数週間の交渉では解決し得ないと付け加えた。

  さらに、「各国が何を提示するのか、そしてそれらが信頼し得るものなのかをわれわれは確認する必要がある」とし、「この先の道筋を見極めていくことになるだろう」と話した。

  ラトニック商務長官やナバロ上級顧問(貿易・製造業担当)も別途、トランプ氏の立場についてベッセント氏と同様の見解を示した。

  トランプ氏による相互関税発表後の2営業日で、株式市場では5兆4000億ドル(約793兆円)の時価総額が消失し、S&P500種株価指数は11カ月ぶり安値に沈んだ。

  この相場急落についてベッセント氏は、「オーガニック・アニマル(感情的に動く予測不可能な市場参加者)」による短期的な反応だと指摘。「時折、市場ではこうした短期的な反応が見られる」とし、「市場は常にドナルド・トランプ氏を過小評価している」と述べた。

Volatility Begets Volatility

  またハセット国家経済会議(NEC)委員長はこの日、トランプ氏の関税により米国の消費者物価が「幾分上昇するかもしれない」と認めつつ、エコノミストや米連邦準備制度の当局者、一部議員による懸念は行き過ぎとの認識を表明した。

  ABCニュースの番組「ジス・ウィーク」で、「米国における消費者への大きな影響」は予想していないとし、トランプ氏が議会での通過を目指す減税や歳出削減がゆくゆくは米国民に恩恵をもたらすとの見解を示した。

遅らせる計画ない

  トランプ氏が2日に署名した大統領令に基づき、米国への全輸出国・地域に基本税率10%の関税を課す措置が5日に発動された。対米貿易黒字の大きい約60カ国・地域を対象とした上乗せ税率については9日に適用され、日本への関税率は24%となる。

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  ラトニック氏は、9日に予定している上乗せ税率の適用を遅らせる計画はないと、CBSニュースの番組「フェース・ザ・ネーション」で発言。新たな関税措置を発表したトランプ氏は「冗談を言っているわけではない」と指摘した。

  トランプ氏の主な不満の対象は昨年1兆ドルを突破した米国の物品貿易赤字だ。株式市場では過去2営業日でその5倍もの時価総額が吹き飛んだものの、トランプ氏とその支持者は貿易赤字を解消すれば、長期的に「米国は再び豊かになる」と主張している。

  ナバロ氏はFOXニュースの番組「サンデー・モーニング・フューチャーズ」で、「これは不正が理由で制御不能となった貿易赤字に基づく国家非常事態であり、交渉ではない」とコメント。一方で、「われわれには常に耳を傾ける用意がある」とも語った。

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原題:Bessent Defiant on Tariffs as He Rejects a US Recession (2)(抜粋)