▽【米国市況】株続伸、利下げ観測で債券高-エヌビディア株引け後下落

Rita Nazareth

  • 円は対ドルでほぼ変わらず-ユーロ下げ渋り、投資家は仏情勢を注視
  • 30年債はアンダーパフォーム、FRBの独立性巡る懸念くすぶる

27日の米国株式市場は続伸。S&P500種株価指数は過去最高値を更新して引けた。米国債は短期債を中心に上昇する一方、ドルは下げに転じた。

  だが、引け後に発表されたエヌビディアの決算が市場の期待に届かず、S&P500種に連動する上場投資信託(ETF)は時間外取引で下落している。

株式終値前営業日比変化率
S&P500種株価指数6481.4015.460.24%
ダウ工業株30種平均45565.23147.160.32%
ナスダック総合指数21590.1445.870.21%

  時価総額が4兆4000億ドル(約648兆5000億円)に上るエヌビディアは、S&P500種のウエートが8.1%で、株価の変動が市場全体を左右するほどの影響力を持つ。ブルームバーグがまとめたデータによれば、オプション市場では決算発表の翌日に株価が6%程度、上下いずれかの方向に動くとの見方が織り込まれている。

  エヌビディアが示した8-10月(第3四半期)の売上高見通しはおよそ540億ドル。市場予想の平均とおおむね一致しているものの、一部アナリストが見込んでいた600億ドル超には届かなかった。エヌビディアの株価は決算発表後に下落し、直近では5%安。なお、見通しには中国向けのデータセンター関連売上高が含まれていない。

関連記事:エヌビディア、低調な売上高見通し発表-AI投資鈍化懸念強まる (1)

  フリーダム・キャピタル・マーケッツのジェイ・ウッズ氏は決算発表前、「エヌビディアに関して『世界で最も重要な銘柄』との表現は控えめ過ぎる」と指摘。「同社は期待値が高まる中でも、それを上回る結果を出し続けている。成長見通しは指数関数的に伸びており、減速の兆しは見られない」と述べていた。

  エヌビディアの時価総額はAIブームへの期待から、4月初旬以降に約2兆ドル拡大。株価は最高値近辺での取引が続いている。

  ベルウェザー・ウェルスのクラーク・ベリン氏は、市場はかなり前からエヌビディア決算が強い内容になるとの見方を織り込み済みで、バリュエーションは高止まりしていると話す。

  また9月の米利下げがほぼ確実視されていることから、米国株がここから上値を伸ばすには、エヌビディア決算が次に乗り越えるべきハードルになると指摘した。

  エヌビディアの8-10月(第3四半期)の売上高見通しを巡っては、予想レンジの上限と下限の差が約150億ドルに達していた。米中の半導体政策を巡る不透明感から、中国の売上高見通しが読みづらいことが背景にあり、ジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)が中国についてどう語るかも注目だ。

関連記事:エヌビディア決算、読めない中国売上高が波乱要因か-予想大きく乖離

米国債

  米国債相場は上昇(利回りは低下)。5年債入札は低調だったが、利下げ観測が利回りの下押し要因となった。

国債直近値前営業日比(bp)変化率
米30年債利回り4.92%0.10.02%
米10年債利回り4.23%-2.7-0.64%
米2年債利回り3.61%-7.0-1.91%
  米東部時間16時54分

  年限10年以下の国債利回りは入札後も、この日の最低水準かその近辺で推移。2-5年債利回りは5月初旬以来の水準をつけた。

  背景には、米利下げ観測が広がっていることがある。

  ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合について「ライブ」だと位置付け、金利変更の可能性を示唆した。ただ、自身がどういった行動方針を支持するかは明言しなかった。

関連記事:NY連銀総裁、全てのFOMC会合が「ライブ」-9月金利変更に含み

  財務省が実施した5年債入札(発行額:700億ドル)は、最高落札利回りが3.724%と、入札前取引(WI)水準の 3.717%を上回った。これは需要が想定よりも弱かったことを示している。対照的に、前日実施された2年債入札は最高落札利回りがWI水準を1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)余り下回った。

  オックスフォード・エコノミクスのチーフアナリスト、ジョン・キャナバン氏は、短期ゾーンへの需要が「中期ゾーンに波及することはなかった」と指摘。「トランプ大統領が連邦準備制度理事会(FRB)への圧力を強めていることで、イールドカーブのスティープ化が進み、インフレ加速のリスクを高めるだろう」と述べた。

  ただ、入札需要を測る他の指標は堅調だった。応札を義務づけられているプライマリーディーラーの落札比率は8.8%にとどまり、過去最低水準に並んだ。これは投資家から旺盛な需要があったことを示している。

  半面、30年債はアンダーパフォームした。トランプ大統領が住宅ローン詐欺の疑いを理由に、クックFRB理事を解任すると通告した影響が続いている。

  この日は、ハセット国家経済会議(NEC)委員長がクックFRB理事について、この問題に関する訴訟の間は休職すべきだとの見解を表明。

関連記事:ハセット氏、クックFRB理事は訴訟中休職すべきだと主張

  ベッセント財務長官はパウエル議長に対して、クック理事の疑惑を巡る内部調査の実施を改めて求めた。ベッセント氏は「外部による調査が始まる前に、パウエル議長に内部で調査を行うよう促してきた」と述べ、クック氏に関する問題について「まさに取り組むべきことだ」と強調した。

関連記事:ベッセント財務長官、FRBにクック理事の疑惑巡る内部調査要求

為替

  ニューヨーク外国為替市場ではドル指数が下落。エヌビディア決算を控え、株式市場が値上がりしていることが背景にある。

為替直近値前営業日比変化率
ブルームバーグ・ドル指数1204.85-0.59-0.05%
ドル/円¥147.44¥0.040.03%
ユーロ/ドル$1.1638-$0.0004-0.03%
  米東部時間16時55分

  ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.3%上昇していたが、下げに転じた。

  円は対ドルでほぼ変わらず。欧州時間には一時148円18銭まで売られたが、ニューヨーク時間の午後に入って下げを縮小した。

  週末にかけては月末要因の資金フローが主要10通貨の値動きに影響を与える見通し。

  ユーロは対ドルで一時0.6%安まで売られたが、その後は下げ渋る展開。投資家は政局不安が高まっているフランス情勢を引き続き注視している。この日は10年物の仏・独国債利回り差が1月以来の水準まで拡大した。

関連記事:フランス・ドイツ10年債利回り差、1月以来の最大に接近-仏政治不安

  シティグループのアダム・ピケット氏とダーク・ウィラー氏らは「今年に入ってのS&P500種の大幅下落や、近年における広範なリスクオフ局面ではドルが売られやすい地合いとなる傾向があり、エヌビディア決算に際しても一定のドル下落リスクがある」とリポートで指摘した。

ドル・円相場の推移
出所:ブルームバーグ

原油

  ニューヨーク原油先物相場は反発。原油やガソリン、ディーゼル油の在庫減少を背景に、供給過剰を巡る懸念が和らいだ。

  今月に入って原油価格の値幅は5ドル内にとどまっているが、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)のプロンプトスプレッド(期近スプレッド)は約1週間ぶりの大幅にまで拡大し、需給の引き締まりを示唆した。

  米政府の週間統計によると、WTI原油先物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの在庫は、8週間ぶりに減少。全米ベースの原油在庫は240万バレル減と、市場予想より大幅なマイナスとなった。

  ガソリンなど石油製品の在庫も減少し、関税が長期的な消費見通しへの重しとなる中でも依然として需要が底堅いことを示唆した。ただし、世界的な貿易環境の悪化は米原油先物が年初来で12%下落する一因となっている。

Oil Gains on Stockpile Draw | Prices partially recouped Tuesday's loss as oil inventories tightened
上段:WTI先物、下段:SPRを除いたエネルギー省の原油在庫出所:NYMEX、米エネルギー情報局(EIA)

  トランプ米政権は27日、インドからの一部輸入品に対してアジアで最も高い50%の関税を発動した。ロシア産原油購入への制裁措置で、7日に発効していた25%の税率から倍に引き上げられた。しかしインドの製油業者は大半の購入を維持する方針だ。

  A/Sグローバル・リスク・マネジメントのチーフアナリスト、アルネ・ローマン・ラスムセン氏はこうした貿易制限措置について、世界的な供給過剰懸念の緩和にはつながらないと指摘した。

関連記事:トランプ米政権、インドにアジア最高の50%関税を発動-税率2倍に

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI10月限は前日比90セント(1.4%)高の64.15ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.2%上げて68.05ドルで終えた。 

  金先物相場は続伸。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、前日比15.60ドル(0.5%)高の1オンス=3448.60ドルで終えた。スポット価格はニューヨーク時間午後3時54分現在、1.41ドル(0.1%未満)上げて3394.98ドル。

原題:Stocks Rise as High-Stakes Nvidia Results in Focus: Markets Wrap

Treasuries Add to Gains Despite Cool Demand for Five-Year Notes

Dollar Slips, US Stocks Rally Before Nvidia Results: Inside G-10

Oil Rises as Falling US Crude Inventories Outweigh India Tariffs(抜粋)