深刻な労働力不足を解消するため、外国人労働者の受け入れ体制を見直すことになった。昨日開かれた経済財政諮問会議で首相が消費税増税やオリンピック後の需要減に対応した経済政策の検討とともに、外国人労働者の受け入れ対策の見直しを指示した。6月頃にまとめる「骨太の方針」に概要を盛り込むことになりそうだが、首相は「移民政策は考えるつもりはない」と明言している。現状の外国人労働者の受け入れは留学生のアルバイト、在留期限を限定した特定分野における技能労働者の受け入れにとどまっている。言って見れば条件付きの極めて限定的な受け入れである。外国人労働者はすでに日常生活の中に浸透している。そろそろ移民政策の検討が必要ではないか。
外国人労働者の受け入れを移民政策にまで広げて検討するのは決して簡単なことではないと思う。現状は「経済・社会基盤の持続可能性を確保していくため、真に必要な分野に着目しつつ、外国人材受入れの在り方について、総合的かつ具体的な検討を進める。このため、移民政策と誤解されないような仕組みや国民的なコンセンサス形成の在り方を含めた必要な事項の調査・検討を政府横断的に進めていく」(未来投資戦略・2017に閣議決定)。これが現在の政府の基本スタンスである。ここでいう経済・社会基盤の持続可能性とはなにか。ひとことでいえば、島国・日本が培ってきたほぼ単一民族による温和で協調的な社会秩序の維持ということだろう。外国人労働者が増えることによって平穏な社会基盤が乱されることがあってはならない。だから安倍首相はわざわざ「移民政策は考えない」と釘をさす。
逆に言えば、移民政策を導入しなればならないほど現状の労働力不足は深刻ではないとみているということでもある。国民的なコンセンサスがない以上、いますぐに移民政策の導入に踏み切れというつもりはない。せめて移民政策導入に向けた問題点の整理やメリット、デメリットといった下準備ぐらいはそろそろ始めたほうがいいのではないか、そういう話である。少子高齢化はもううだいぶ前から予測されていた。にもかかわらず対応が後手後手に回り、結局は限定的ながら外国人労働者の受け入れに頼らざるを得なくなった。転ばぬ先の杖である。何事も早めの対応が問題解決の難易度を引き下げる。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば日本の人口は2050年には1億人を割り込む。移民政策はデフレ脱却にも有効だろう。そろそろ検討を始める時期ではないだろうか。