きょうのテーマは値下げ。西友がきのう食品・日用品約500品目を平均約7%値下げすると発表した。スーパーが競い合って繰り広げている値下げ合戦の一環である。こうした値下げはマクロ経済的に見て本当に正しいのだろうか。こんなことに疑問を抱くと全国の主婦層から猛反撃を食らいそうな気がする。別に値下げが悪いと言っているわけではないが、日本のサービス産業はスーパーに限らず価格が上昇しない傾向が強い。個人的には物価が上昇しない一因ではないかと疑っている。値下げ後の価格が適正価格であれば問題ない。しかし、消費者を引き付けるための甘味料だとすれば問題だ。値下げが従業員の賃金抑制や納入業者に対する価格の引き下げにつながっているとすれば、なお悪い。日本経済の諸悪の根源であるデフレに加担していることになる。

日本経済の最大の問題は物価と賃金が上昇しないことである。名目賃金の上昇率と失業率をグラフ化したフィリップス曲線を見ると、日本はフラット化が顕著になっている。失業率は労働需給を反映したものだから、人手不足感が強まれば名目賃金が上昇するというのが一般的な姿だ。労働不足が顕在化し失業率が下がれば賃金は上昇するはずだ。だが、日本はそうなっていない。労働力不足が深刻化しても賃金は上がらない。どうしてだろう。日本経済の大きな謎である。いまは18春闘の時期。労働組合は賃金の大幅な引き上げと同時に、仕入れ価格に利益を上乗せした適正価格の推進を経営者側に求めるべきだと個人的には思う。スーパーに代表されるように、経営者も消費者も労働組合も「値下げはいいこと」という間違った発想に汚染されている。

サービス価格の国際比較を見ると米国や英国、フランスといった先進国では緩やかながら右肩上がりの上昇曲線を描いている。これに対して日本はここ20年ぐらいほぼ水平である。2014年の4月に消費税が5%から8%に引き上げられたが、それでもサービス価格にはほとんど変化が見られなかった。日本のサービス産業は生産性が低いことで知られている。低い生産性を補うものがあるとすればそれは価格である。値上げすることによってサービスの提供業者は利益を得る。その利益を還元する形で従業員やパートの賃金を引き上げることができる。まして少子高齢化で労働力不足が深刻化している。従業員の給料にはただでさえ上昇圧力がかかっている。値上げしなければ事業の継続性が問われかねない。こうした中で西友に限らずスーパー業界は値下げする。これって本当に正しいの。