日本経済の問題点の一つは「値下げ競争」が止まらないことだと思う。原因はどこにあるのか。そんなことを考えさせてくれるのが25日付で朝日新聞朝刊に掲載された上の記事だ。

昭和は戦争の時代であり、経済成長を背景に価格をめぐって「生産者」と「消費者」が対立した時代だった。こうした動きを象徴するのがダイエー創業者の中内㓛氏と花王やパナソニックとの“価格戦争”である。メーカーの価格設定を無視して安売りをした中内氏に花王はダイエーへの出荷を停止する。これに対抗して中内氏は街の薬局で花王製品を購入し損を覚悟で安売りをした。いわゆる花王とダイエーの10年戦争である。安値にこだわる中内氏は損して得をとる。これがダイエー商法の神髄であり、徹底的に消費者に寄り添うことで小売を流通ビジネスに押し上げた。かくして「お客様は神様」となる。

90年代、日本はバブル崩壊で八方塞がりの閉塞状態に陥る。折から世界ではグローバ化が進展。中国が台頭して国内の空洞化が始まる。メーカーは生産拠点を海外に求め、生産コストを引き下げ「神様」に寄り添う姿勢を鮮明にする。ユニクロが登場し、牛丼チェーン、ファーストフード、コンビニ、宅配便・・・など、様々な専門店が安売り競争で事業を拡大する。

こうした中で登場した安倍政権はデフレ脱却を目指して異次元緩和など大胆な経済政策を発動する。しかし、デフレ脱却は依然として「道半ば」。スーパーは相変わらず値下げで生き残りを図っている。こうした中でヤマト運輸は値上げや受荷総量の抑制で事業の継続性を確保しよう大胆な行動に打って出た。記事には「スタッフたちがヘトヘトで配っていることを知った消費者は、過剰なサービスをさせていることに気づいた」とある。消費者は賢くなり始めている。

その一方で、相変わらずデーターの改ざんなどメーカーの不祥事も後を絶たない。メーカーや生産者が価格の透明性を確保しない限り、消費者は適正価格を判断できない。「安ければいい時代」は過去のもになりつつある。未来に向けて消費者と生産者がどう折り合うか、適正価格をめぐる模索が始まっているような気がする。