昨夜来のニュースを見ながら、北朝鮮による「ほほえみ外交」は事態打開の切り札にならないだろうと感じた。むしろ韓国は朝鮮半島の非核化を難しくしている。このままでは結局、過去の歴史が示すように北朝鮮による「時間稼ぎ」に手をかすことになるのではないか。誰もが反対できない話し合いによる解決が大手を振ってまかり通る。その意味では金正恩委員長の政治手腕は見事としか言いようがない。ほほえみ外交で韓国を手玉に取り、世界中の世論を見方につけようとしている。日米韓の3カ国とも世論は話し合いでの問題解決に傾くだろう。世論に反して話し合いを拒否することは難しい。現にトランプ大統領は話し合いに傾き始めているように見える。だが、それは北朝鮮の思う壺だ。今必要なのはさらなる“圧力”だ。

韓国の使節団と北朝鮮の金正恩委員長との会談で北朝鮮は米朝対話に向けて大きな一歩を踏み出した。北朝鮮側は「満足のいく合意を得た」と金委員長が自ら発言、韓国側は大統領府が「失望させない結果があった」との見解を表明した。昨夜会見した使節団の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は南北の首脳が4月末に、軍事境界線にある板門店(パンムンジョム)で会談することで合意したと発表した。このほか、首脳間のホットライン設置、対話継続中に北朝鮮は核・ミサイル実験をしない、さらに米韓の合同軍事演習に北朝鮮は「理解」を表明した。それ以上に驚きなのは北朝鮮が、軍事的脅威が解消され体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がないと表明したことだろう。誰もが北朝鮮の前向きな態度を疑わない。

それでも個人的には北朝鮮の豹変に理はないと思う。このゲームは何回やっても北朝鮮が勝つ。真に朝鮮半島に平和をもたらす唯一の手段は「最大限の圧力」をかけ続けることだ。年明け早々からの北朝鮮の豹変は国際的な「圧力」がもたらした結果だ。北朝鮮に対する圧力が効き始めているいまが一番大事な時だ。いまこそ韓国は北朝鮮の非核化に向けて、圧力外交を展開すべきだ。しかし、現実的には韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は北朝鮮の“ほほえみ”に擦り寄っている。擦り寄り外交は問題の根本的な解決にならない。平昌オリンピックを契機とした韓国の対話路線は、出だしからボタンを掛け違えている。掛け違えたボタンの先にあるのが首脳会談であり、北朝鮮の時間稼ぎを容認することである。昨夜来のニュースを見ていると世界中がそのことに気づきながら、誰もそれを止めることができない。進歩なき国際政治のデジャブーである。