森友問題では近畿財務局職員らが背任や証拠隠滅、公用文書毀棄(きき)の容疑で弁護士グループなどから告発され、大阪地検が捜査している。財務省は「捜査に全面的に協力している」としたうえで「すべての文書を直ちに確認できない」と報告した。文書の原本は地検に提出したため残っていないのだという。
仮に原本がなくても、担当者に問い合わせれば、書き換えたかどうかは確かめられるはずだ。財務省が「捜査に影響を与える」の一点張りで確認を避けるのは理解に苦しむ。そもそも大阪地検が告発を受理したのは昨年4月だ。その後も森友問題は国会で取り上げられ、会計検査院による検査も行われた。
書き換え疑惑の内部調査を野党から迫られ、にわかに「捜査への影響」を持ち出すのは不自然だ。財務省報告に野党は「ゼロ回答だ」と反発し、2018年度予算案の参院審議はきのうから止まっている。自民党の二階俊博幹事長ですら「理解できない」と批判し、与党からも政府に対応を促している状況だ。
森友問題が表面化して1年が過ぎた。売却価格を約8億円値引きする過程で財務省が不当な便宜を図ったのではないかという点が根幹だ。安倍晋三首相の妻昭恵氏と学園の関係をそんたくした疑いも消えない。
財務省はこれまで学園側と価格交渉はしていないと説明してきた。財務省が国会に開示した土地取引の決裁文書に価格交渉の記載はない。しかし、朝日新聞の報道によると、学園側の求めに応じて価格を提示することになった経緯などが決裁文書の原本には記載されていたという。
麻生太郎副総理兼財務相は国会で「改ざんが真実であるとするならば、極めて由々しき事態だ」と答弁した。一方で、内部調査には「捜査当局から口裏合わせと取られかねない」と否定的な考えを示している。何かを隠そうとするから、口裏合わせが必要になるのではないか。安倍首相は麻生財務相に内部調査と情報開示を指示すべきだ。