ひょっとするとトランプ大統領と金正恩委員長のトップ会談が近づいているのかもしれない。連日の北朝鮮報道を見ながらふとそんな気がした。平和的に問題が解決できるならそれにこしたことはない。気になるのは北朝鮮が体制維持の保証を求めていることだ。体制維持が保証されれば、北朝鮮は「核を保有している意味がなくなる」と金正恩委員長は発言した。問題はこの「体制維持」が何を意味するかだ。体制維持の見返りに北朝鮮が非核化することで何が解決するのだろうか。日本の拉致被害者は解放されるのだろうか。北朝鮮が海外で行った不法行為は断罪されるのだろうか。何よりも2500万人の北朝鮮人民の抑圧は解かれるのか。トランプ大統領の肩にかかっている“使命”は重すぎる気がする。
米朝会談の行方はまだはっきりしない。これから米朝2国間にとどまらず日本や中国、ロシア、国連も巻き込んだ駆け引きが水面下で繰り広げられだろう。年明け早々に金委員長が平昌オリンピックへの参加を表明した時から、関係国の情報合戦は始まっている。その上で事態はここまで進んできた。素人目に見るとこれまでの展開は明らかに北朝鮮ペースにみえる。韓国は北朝鮮の「ほほえみ外交」に擦り寄っているようにしか見えない。しかし、5日に北朝鮮を訪れた韓国の使節団がたった1時間の会談で4月末に南北首脳会談の開催や、ホットライン開設などを決めた。その上で金委員長の米韓軍事演習容認発言や非核化発言まで飛び出した。ということは 米朝の水面下の話し合いは相当前から進んでいたと見た方がいいだろう。
いずれにしろ米朝対話は動き出した。先走りしすぎるかもしれないが、米朝対話の先に何があるのだろうか。北朝鮮が求めるのは体制の保証だ。トランプ大統領は中間選挙に向けた支持率のアップが欲しい。要するに両首脳の最大の目的は“保身”だ。米朝首脳保身会談で捨ておかれるのは抑圧されやせ衰えた2500万人の北朝鮮人民であり、金正男氏の遺族の怒りであり、日本の拉致被害者家族の憤りだろう。北朝鮮が海外で行っている不正の数々は立証することすら難しい。インターネットを使った国際的な犯罪も北朝鮮の仕業だと疑われている。非核化が実現して北朝鮮の体制が保証されれば、トランプ大統領も金正恩委員長も満足だろう。ほんとうにそれでいいのだろうか。トランプ大統領の責任は殊のほか重大だ。個人的には北朝鮮の体制保証を前提とした非核化では納得できない。