[フランクフルト 8日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)は8日の理事会で、必要なら債券買い入れ規模を拡大するとの従来の方針、いわゆる「緩和バイアス」を撤回し、量的緩和の解除に向けた手続きを小幅ながら一歩前に進めた。決定は全会一致。
ECBは声明で「足元月額300億ユーロの純資産買い入れは、2018年9月末まで継続するとともに、必要であればその後、インフレ動向が目標水準に持続的に調整されたと判断されるまで延長する意向である」と表明した。ドラギECB総裁は理事会後の会見で「ECBの責務は物価安定に関するものだが、勝利宣言はまだできない」と語った。
債券買い入れ規模の拡大がこれまで現実に起き得ると見込む向きはほとんどいなかっただけに、今回の緩和バイアスの撤回はドラギ総裁自身が「後ろ向きの対応」と指摘するように、概ね象徴的な措置と捉えられる。ただ市場では「非標準的政策からの脱却に向けた重要な一歩」(DNB銀)と評価する声も聞かれた。
またクレディスイスのアナリストは「変更はわずかにすぎないが、そこから今後ECBが向かう方向性があらためて見て取れる。経済がよほど減速しないかぎり、今後もこうした文言や基調の変更が続くと予想される」と分析した。
経済見通しについては、物価は向こう数年間は緩やかに上昇していくものの、2020年までに物価目標は達成できないとの見方を示し、ユーロ圏の成長率とインフレの見通しをおおむね据え置いた。インフレ率見通しは2018年と19年が1.4%、20年は1.7%。成長率見通しは18年が2.4%。前回見通しは2.3%だった。
ドラギ総裁は「スタッフ予想を含め入手可能な情報は、域内の堅調かつ広範な成長の勢いを裏付けるもので、これは今後短期的に、従来予想をわずかながら上回るペースで拡大していく見込みだ」と話した。
トランプ米大統領が示した鉄鋼・アルミ輸入製品への関税計画については、保護主義の台頭がリスクになるとした上で、同計画が及ぼす直接的な影響は限定的と判断される一方で、こうした米国の対応は一般的に国際関係を巡る懸念を助長しかねないと指摘。「同盟国に対し関税措置を導入した場合、どの国が敵対国になるのか疑問が生じる」と述べたほか、関税が報復をもたらし、それが為替変動や経済の不安定化を引き起こした場合、金融政策の決定は一段と複雑になる恐れがあると警告した。