仮想通貨に関する各国の主な規制

 「すべての金融市場の安全を保つため、世界が同じ規制を行うべきだ」。投機取引の拡大などで存在感を高める仮想通貨に対して、米国のムニューシン財務長官は2月、こう強調した。米国が重視するのは、仮想通貨が資金洗浄や詐欺に使われる事態の抑止だ。仮想通貨取引に本人確認を義務付けていない国もあり、放置すればテロ資金の送金や隠匿に利用されかねない。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事も「(仮想通貨の)匿名性や透明性の欠如は、資金洗浄やテロ資金の流れを覆い隠している」として分析に着手している。

 米国は投資家保護の観点からも警戒を強めている。米証券取引委員会(SEC)のクレイトン委員長は昨年12月の声明で、仮想通貨を使った新たな資金集めの手法である「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」について、「(株式や債券など)従来の証券取引に比べ投資家保護が弱い」と指摘。ICOの大部分が証券取引法の規制の対象になるとの認識を示した。G20では、国際的な規制枠組みの構築を提案する方向だ。

 欧州の当局も仮想通貨の規制に動いている。欧州連合(EU)は2月26日、加盟国の中央銀行や金融当局を集めた検討会を開き、2019年中をめどに仮想通貨を規制する仕組みを構築することを確認した。G20でも仮想通貨の現状の問題点を提起し、規制の必要性を訴える意向という。

 中国政府は、仮想通貨を介した国内資産の流出に神経をとがらせる。中国当局はこれまで金融市場の安定のため国内資産の海外移転に厳しい制限を課してきたが、仮想通貨が「抜け道」として利用者を集めてきたからだ。監督当局は昨年9月、ICOの即日禁止を発表し、併せて大手仮想通貨交換業者も軒並み閉鎖に追い込んだ。G20では、国際資本移動の規制や、行き過ぎた投機の規制に向け、各国に協調を呼び掛ける見通しだ。

日本、国際協調主導へ

 日本は昨年4月、改正資金決済法を施行。仮想通貨交換業者を登録制にするなど他国に先駆けて、利用者保護の枠組みを整備した。しかし、今年1月には、金融庁に登録を申請中のみなし業者として営業していた仮想通貨交換業者コインチェックから580億円相当の仮想通貨が流出する事件が発生。同庁はこれを受けて、みなし業者も含む交換業者全体への緊急の立ち入り検査を実施。業界に対してセキュリティー対策の強化などを求めるとともに、利用者保護の一層の充実を図る仕組みを検討している。日本は今回のG20会合で、こうした“教訓”を他国に伝え、国際的な規制に向けた協調をリードしたい考えだ。【宮川裕章】

 ■KeyWord

仮想通貨

 円などの法定通貨と異なり、中央銀行など公的な発行主体や管理者が存在せず、インターネットを通じてユーザー同士でやりとりされる通貨。交換業者を通じて円やドルなどリアルな「お金」にも替えられる。

 ビットコインなど世界に約1500種類があり、全体の時価総額は12日現在、約41兆円に上る。

 日本は資金決済法で仮想通貨を(1)代金支払いのために不特定の相手に使用でき、不特定の者を相手方として売却・購入できる(2)法定通貨、法定通貨建て資産ではない(3)電子的に記録され、移転できる--などと定義している。仮想通貨は送金コストが安いなど利点がある一方、多くが投機対象となり、価格の乱高下が激しい。