2018年の春闘はきのうが自動車、電機など大手企業の集中回答日だった。例年春闘相場をリードしてきたトヨタが詳細な回答の公表を見送るなど、横並びだった春闘に変化の兆しが出始めた。肝心のベアが全体で定昇込みでどのくらいの水準になったのか、メディアの報道を見る限りはっきりしない。トヨタは全体で3.3%の賃上げと発表しているから、多分、大企業の水準は3%を超えたのではないかと思う。金額も大事だが今年の春闘では、働き方改革をめぐって労使の間で真剣な検討が行われたような気がする。1時間単で有給を取得する制度の導入など、多様化するワークライフバランスへの模索を始まっている。
春闘の相場形成をリードしてきたトヨタが詳細な回答の中身を公表しなかった理由はよく分からない。ただ、自動運転自動車や電気自動車への転換が目前に迫っており、トヨタとえども自動車業界が直面しているこの激動期を簡単に乗り切れるとは思っていないのだろう。時代はすでにトヨタを超えて先に行っている。トヨタが今春闘を機に春闘相場のパイロット役を降りたのはある意味では当然だったのかもしれない。そういうところにいち早く気がつき、リード役を自ら放棄するところにトヨタという会社の先見の明があるといってもいいような気がする。そう考えると電気や金属労連が相変わらず同一回答日の同一回答を続けていることが逆に古臭く思えてくる。
問題は少子高齢化の中でどうやって働き方を変えていくかだ。政府は罰則付き時間外労働時間の上限設定や同一労働同一賃金に加え、高度プロフェッショナル制度を提案しようとしている。ワークライフバランスが多様化する時代に与野党を超えて国会はこれにどう対応するのか。春闘の次は国会が答えを出す番だ。裁量労働制度の適用拡大は厚労省のチョンボで法案の提出が見送られた。高プロにしても裁量労働にしても働く人の裁量権を拡大して労働の質を高め、生産性を引き上げることが狙いだ。労働人口が減少する中で国際的な過当競争を勝ち抜くためには仕事の質を高める以外に方法はない。ロボットが大半の仕事を代替できる時代がもうちょっとするとやってくる。その時に必要とされる質の高い労働、これからの春闘は賃金に加えて労働の質が問われる時代になる。