[ニューヨーク 14日 ロイター] – ニューヨーク外為市場では、ショートポジションに対する利益確定の動きが出たことで過去3日間下落していたドルが上向いた。ただトランプ米政権の政策を巡る先行き不透明感のほか、貿易戦争を巡る懸念が再燃していることで、ドルの見通しが不透明な状況は 続いている。
 トランプ政権では前週、国家経済会議(NEC)のゲーリー・コーン委員長が辞任を 表明。トランプ大統領の鉄鋼とアルミニウムに対する輸入制限措置の発動が背景にあった とみられる。これに続きトランプ大統領は前日、ティラーソン国務長官を更迭し、後任に ポンペオ中央情報局(CIA)長官を充てると発表。ポンペオ氏はトランプ大統領の国際 政治問題における強硬路線を共有しているとみられている。
 コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジ(ワシントン)の首席市場アナリスト 、オマー・エシナー氏は、「保護主義、孤立主義的な考えを持つ一派が政権内で勢力を増 大させているとの懸念が出ている」としている。このほか、トランプ政権が中国からの輸入品のうち最大600億ドルに相当する製品に関税を課すことを計画していることが前日、関係筋の話で判明。トランプ政権の保護主 義的な姿勢に対する懸念が再燃している。
 この日発表の米経済指標では2月の小売売上高が前月比0.1%減となり、0.3%増との市場予想に反して減少。ドルに支援的な内容ではなかった。スタイフェルノス首席エコノミスト、リンジー・ピエグザ氏はロイター・グローバル・マーケッツ・フォーラムのチャットルームで「小売売上高はここしばらくは軟調となっており、天候要因が作用しているわけではないことが示唆されている」と指摘。「連邦準備理事会(FRB)は将来的に成長が鈍化する可能性について検討する必要がある」と述 べた。
 終盤の取引で主要6通貨に対するドル指数は0.1%上昇の89.73。上昇 したものの、1カ月ぶり低水準の89.40に近い水準にある。ドル/円は0.3%安の106.29円。 ユーロ/ドルは0.2%安の1.2369ドル。欧州中央銀行(ECB)のド ラギ総裁が、インフレが目標に向け持続的に上昇していとの一段の確証が得られれば資産買い入れを終了するとの見方を示したことを受け、ユーロは軟調となった。