佐川宣寿前国税庁長官への証人喚問は、政権追及の好機とみていた野党にとって実りの少ない結果に終わった。「あなたは火に油を注いだ」。立憲民主党の福山哲郎幹事長は27日の参院予算委員会で、怒りに満ちた言葉で質問を締めくくった。「事実を解明する場」(福山氏)とは程遠い喚問に終わったからだ。だが、「誤算」はそもそも喚問の前に生じていた。
立憲民主、希望、民進など6野党の議員は23日と26日、大阪拘置所(大阪市)に出向き、学校法人「森友学園」の前理事長、籠池泰典被告=詐欺罪などで起訴=と接見した。喚問を前に追及の材料になる証言を得ようという狙いだった。しかし、新味のある発言を聴取できなかっただけでなく、与党側に「詐欺事件で勾留されている籠池被告との接見によって、どのような真相が明らかになるのか」という反論の余地を与えてしまった。
接見後に議員がテレビカメラの前でやり取りを紹介する様子は「籠池被告とタッグを組む野党」という負のイメージを流布し、追及の矛先を確実に鈍らせた。「嘘はアカン」。籠池被告のこんな発言を笑顔で披露した社民党の福島瑞穂副党首に至っては、もはやブラックジョークだ。
それでも、接見の成果を証人喚問に生かすことができればまだ救いはあった。23日の接見後、記者から「喚問に備え『隠し玉』があるか」と問われた希望の党の今井雅人国対委員長代理は「あります」と胸を張った。しかし、27日の喚問でそれらしき「玉」を繰り出すことはなかった。
「何ら隠し玉が出てこなかった。接見がパフォーマンスであるという証明だ。日本維新の会の馬場伸幸幹事長は27日の記者会見で冷ややかに語った。(松本学)