• 買収提案の検討は初期段階、行うかどうかは未定-武田薬
  • シャイアー株が急騰、一時26%高-時価総額は武田薬上回る

武田薬品工業は28日、バイオ医薬品メーカーのシャイアーに対する買収提案を検討していることを明らかにした。買収提示額は500億ドル(約5兆3000億円)近くに上る可能性がある。日本企業の海外企業買収としては過去最大級で、実現すれば武田薬は世界大手の一社に躍進することになる。

武田薬の発表を受けてシャイアーは、正式な提案は受けていないとのコメントを出した。英国の企業買収関連法に基づき、武田薬は4月25日までに提案を行うかどうかを表明しなければならない。シャイアーを買収すれば、がんや消化器疾患、神経障害などの治療分野を強化でき、試験の後期段階にある治療薬を製品群に加えることができると、武田薬が発表資料で説明した。シャイアー株はロンドン市場で一時26%高となり、現地時間午後1時38分現在は16%高。

武田薬品工業のクリストフ・ウェバーCEO
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

武田薬のクリストフ・ウェバー最高経営責任者(CEO)は特許切れや人口減により国内市場での機会が限られる中、海外に活路を見いだそうとしている。発表では、自社を上回る460億ドル前後の時価総額を持つシャイアーの買収資金をどう賄うかには触れていない。

クレディ・スイス証券の酒井文義アナリストは、武田薬はバイオ技術分野の製品パイプライン拡充のために小規模な買収をしてきたが、400億ドルを超える買収資金の調達はこれらとは異なると指摘した。武田薬の発表によると、検討は「初期の予備的段階」で、正式にシャイアー取締役会に接触はしていない。

武田薬は昨年、米アリアド・ファーマシューティカルズを47億ドルで買収したが、まだ買収の余力があると、ウェバーCEOが昨年11月のインタビューで述べていた。ジェフリーズのアナリスト、ピーター・ウェルフォード氏は、武田薬にとってシャイアー買収は理にかなうかもしれないものの、買収規模の大きさがリスクだと指摘。「武田薬は大幅な増資が必要になると思われ、買収と言うより『合併』に近いものになるのではないか。これは、取引を成功裏に完了させることへのハードルになる」と述べた。ブルームバーグのデータによれば、現金や短期証券など武田薬の手元資金は昨年12月31日時点で4403億円相当。