内戦が続くシリアの東グータ地区で戦闘が再燃し、反政府勢力は、アサド政権が化学兵器を使ったと非難しましたが、政権側はこれを否定しています。一方、8日には、反政府勢力の戦闘員が北部へ撤退することなどで政権側と改めて合意に達し、実際に撤退が始まりました。シリアのアサド政権は、首都ダマスカス近郊にある反政府勢力の拠点、東グータ地区を9割以上制圧し、反政府勢力の「イスラム軍」がとどまる最後の地域に対し、6日から空爆を再開しました。
現地の医療団体によりますと、7日の攻撃のあと、呼吸困難に陥る人が相次ぎ、49人が死亡するなど多数の死傷者が出ていて、反政府勢力は、政権側が化学兵器を使ったと非難しました。これに対し、政権側は、でっちあげだと強く否定しています。一方、8日には政権側と反政府勢力との間で交渉が再開され、シリアの国営テレビによりますと、反政府勢力は、48時間以内に戦闘員が北部に撤退し、拘束していた捕虜などを解放することで、政権側と改めて合意に達し、実際に撤退や解放が始まりました。反政府勢力の指導者はツイッターで、「撤退に応じなければ再び化学兵器が使われるおそれがあった」と述べ、撤退はやむをえないとの考えを示しました。
反政府勢力の戦闘員が撤退すれば、東グータ地区はすべてアサド政権の支配下に入ることになりますが、反政府勢力が政権側と撤退に合意したあと戦闘が再燃した経緯もあり、合意どおり進むかどうかは予断を許さない状況です。
EUは厳しく非難
トルコでも抗議デモ
隣国トルコのイスタンブールでは8日、シリアから逃れてきている反政府勢力の活動家や難民らが、アサド政権が化学兵器を使ったと主張して抗議デモを行いました。抗議デモにはおよそ100人が参加し、このうち、東グータ地区出身の男性はNHKの取材に対し、「地下に避難していた親戚の一家は、地上の建物が倒壊したため、生きているか死んでいるか、化学兵器の被害にあったかのかどうかもわかりません。遺体の写真の中に、いつ親戚や友人の写真を見つけてもおかしくない。その気持ちは口では表現できません」と話していました。
そして、「どのような点から見ても残虐としか言いようがありません。政権の目的は、住民に土地を出て行くよう圧力をかけることだと思う」と述べ、アサド政権を非難したうえで、「シリア人の問題について一緒に立ち上がってほしいというのが、世界へのメッセージです」と話し、国際社会に対し、行動を起こすよう求めていました。