BIGLOBEニュースを見ていたら、韓国最大の新聞社である中央日報に、韓国の有力シンクタンクである世宗研究所が「北朝鮮の対南・対外政策の転換と金正恩のリーダーシップ再評価」と題した報告書を発表したと紹介されていた。中身をみると同研究所の鄭成長(チョン・ソンジャン)統一戦略研究室長が北朝鮮について、「私たちの社会での金正恩に対する認識は非常に偏向している」と指摘しているとのこと。原因は「李明博・朴槿恵政府は金正恩が非常に未熟で非道な指導者という否定的な印象だけ植えつけようとした」ことによるということらしい。

反対に金正恩によって死刑が執行された張成沢(チャン・ソンテク)については、「存命時に北朝鮮で『#Metoo』運動が起きたならば、張成沢が最も重要なターゲットになっただろう」と非難している。見方が変われば人物や物事に対する評価は180度変わってしまうという典型だ。張成沢は女性関係が乱れており、愛人が何人もいたという。誤解を恐れずに言ってしまえば、鄭氏は金正恩による張成沢排除は正当な行為だったとみているということになる。こうしたことを盛り込みながら、韓国で金正恩を再評価する動きが高まっていると、同報告書は結論付けているようだ。これに対して中央日報の記者は、「私自身、金正恩氏を客観的に評価することには賛成だ」としながらも、「金正恩氏がこれまでしてきたことを相対化し、そのネガティブな面を矮小化するのには反対だ」と釘を指す。個人的には全く同感だ。

北朝鮮の非核化は賛成だし、それが話し合いによって実現すればこれに越したことはない。ただ、非核化が何を意味するのか、依然として不明だ。非核化とバーターで北朝鮮が国家として行ってきたこと、当然金一族が指揮して国家としてやらせてきたはずのこと、そうしたことがすべて許されることが条件だとすれば、話し合い解決はそもそも問題の根本的解決にはならない。中央日報の記者は以下の点を指摘する。金正恩氏を客観的に評価するのはけっこうなことだし、必要なことでもある。しかしそのために、「私たち自身の『基準』を変えるようなことがあってはなるまい」。その通りだろう。日本人の拉致問題を取り出すまでもなく、北朝鮮が過去に行ったネガティブな面の清算も含めて非核化交渉は進めるべきだ。日本人にとってはそれが「私たち自身の基準」ということになる。