最高裁「拒絶できる」
「福田事務次官との間で週刊誌報道に示されたようなやりとりをした女性記者の方がいれば、調査への協力をお願いしたい」。財務省は16日、福田氏に対する聞き取り調査の結果を公表すると同時に、同省の記者クラブ加盟各社に対し、社内で女性記者本人に手を挙げることを呼びかけるよう文書で要請した。
官民問わず、報道機関に対して独自の取材行為の内容が明らかになるような協力要請を行うことは「取材源の秘匿」の観点から極めて異例だ。平成18年には、民事裁判で取材源に関する証言をNHK記者が拒んだ問題で、最高裁が「報道関係者は原則として取材源に関わる証言を拒絶できる」との決定も出している。
同省は協力を得るに当たって「不利益が生じないよう、責任を持って対応させていただく」と念を押しているが、作家の佐藤優氏は「当事者の女性記者に『名乗り出ろ』というのは、やっていることが異常」と非難。立教大の服部孝章名誉教授(メディア法)も「取材源の秘匿というジャーナリズムの鉄則への理解が全くない」とし、学校法人「森友学園」に関する文書改竄問題を挙げて、「嘘を突き通してきた組織が、よくそんなことを言えるなと思う。相手の女性記者が誰かは事務次官に聞けばいい話だ」と断じた。
財務省OBで嘉悦大の高橋洋一教授は、新潮の記事で複数の女性記者が福田氏によるセクハラを告発しているとして「報道各社がセクハラを事実と認識しているなら、事実をしっかりと報じるべきだ」と指摘。財務省側の調査協力の呼びかけには「応じるべきだ」との見解を示した。
「大物の傲慢さ根底」
今回の問題をめぐっては、国の予算をつかさどり「最強官庁」と称される財務省の事務方トップが、女性に極めて品位のない発言をしていたことへの批判もある。セクハラ問題に詳しい大阪大大学院の牟田和恵教授は「『自分は大物』という傲慢さが根底にある」との見方だ。
福田氏は聞き取りで、発言相手が女性記者だったことを否定。その上で「普段から音声データのような発言をしているのか」との問いには、女性が接客する飲食店に行くことがあるとして、「お店の女性と言葉遊びを楽しむようなことはある」「仲間内の会話で、相手から話題を振られたりすれば、そのような反応をするかもしれない」と回答した。
「『言葉遊び』という表現は、まさしく本人の正直な思い」と牟田教授。「言葉遊び、距離感を縮めるコミュニケーションぐらいの気持ちで、相手に悪いとすら思っていないのではないか」と苦言を呈した。