日本総領事館近くの歩道に置かれ、機動隊に取り囲まれた徴用工像=韓国・釜山市で2018年5月1日、渋江千春撮影

 【釜山(プサン)(韓国南部)渋江千春】韓国の労働団体がメーデーの1日、日本の植民地時代に徴用された朝鮮人労働者を象徴する像を釜山市東区にある日本総領事館前に設置しようと試みた。警察の機動隊が総領事館手前で像を取り囲んで動かせないようにしたため、労働団体側は「物理的に不可能だ」として設置をいったん断念し、解散した。ただ、像は歩道上に置かれたままで、今後の動き次第では日韓関係に影響が出る可能性が残っている。

 労働団体側は1日午前から、像を押しながら総領事館に向かって前進。総領事館の数十メートル手前で機動隊が労働団体の関係者を排除しようとした際にもみ合いも起きた。設置を断念した後、労働団体は総領事館周辺で「釜山労働者大会」を開催。外交公館の100メートル以内では集会やデモが禁じられており、総領事館の周りに配置された警察官約3000人が警戒にあたった。

 徴用工像設置の動きは昨年、韓国メディアの報道で明らかになり、先月11日に訪韓した河野太郎外相が康京和(カンギョンファ)外相に「望ましくない」という日本の立場を説明。その後、韓国外務省は「外交的な摩擦を招く可能性がある」として、文書で労働団体側に自制を求めた。

 徴用工像についての今後の対応について、東区は「外務省、釜山市などの意見は無視できない。状況を見て議論する」としている。