トランプ大統領の宣言通り米国は昨日、イスラエルの米国大使館を商業都市テルアビブからエルサレムに移転した。この移転に抗議してパレスチナ自治区ガザ地区で大規模なデモが行われた。パレスチナはこの日を「怒りの日」と定め、全土で抗議行動を繰り広げた。この抗議にイスラエルは軍事力で対抗、パレスチナ側に55人の死者がでた。中東情勢が混迷を深める原因の一つがイスラエルだ。イスラエルの存在を否定するつもりは毛頭ないが、素人なりに考えるのはこの日なぜ55人もの死者を出さなければならなかったのか、ということだ。イスラエルとパレスチナが共存する道はないのだろうか。
イランとの6カ国合意から離脱し、駐イスラエル大使館をエルサレムに移転するという強攻策に打って出たトランプ大統領。その背景には一体何があるのか、いつも気になっている。その答えの一つだろうか、9日付の朝日新聞に「鍵を握るのは福音派」という記事が出ている。中身をみると「キリスト教福音派は米人口の約25%が信者と推計され、米国最大の宗教勢力だ。イスラエル寄りの傾向が強く、各種米世論調査では白人の福音派信者のトランプ氏への支持率は約75%。さらに上昇傾向にある」とある。トランプ大統領の頭の中にあるのは11月の中間選挙だ。ここで勝利して2年後の大統領選挙で再選を勝ち取る。すべての政策はその一点に集約されているのだろう。
支持率が低迷するトランプ氏。こうした強攻策が実を結ぶのかどうかわからない。だが、自分に近いところから支持層を広めていくのは多分選挙戦術の常套手段なのだろう。トランプ氏はそういう意味では王道を行っているのかもしれない。だとすれば、再選戦略の一環として実施された大使館のエルサレム移転に抗議して犠牲になった55人の命は報われない。この人たちは何のためにこの世に生を受けてきたのか。キリスト教徒やイスラム教徒とならずとも考えてしまう。イスラエルとパレスチナ、長い抗争の歴史には双方、それなりの言い分があるのだろう。両サイドの仲裁役だった米国はトランプ氏の強攻策によって仲介役の立場を完全に放棄した。この先誰が仲裁役を務めるのだろう。