北朝鮮がとうとう本性を表した。年明けから始まった微笑み外交で見えなくなっていた「本音」の部分である。米韓の合同軍事演習に抗議して16日に予定していた韓国との閣僚級会談の中止に踏み切った。合同軍事演習に戦略爆撃機B52や最新鋭ステルス戦闘機F22が投入されたことで、堪忍袋の尾が切れたようだ。いや、現時点では「キレたふり」をしているのだろう。こうすることによって6月12日に予定されている米朝首脳会談で有利な条件を引き出そうという魂胆だ。これは米韓に対する一種の恫喝といっていい。いままで世界中が見てきた北朝鮮本来のやり方だ。これで本当に局面が変わると思っているのだろうか。所詮は溺れる者の足掻きでしかないと思うのだが・・・。

北朝鮮はご丁寧にも「米国も朝米首脳対面(会談)の運命について熟考しなければならない」と警告している。ここまでくると何かかわいそうな気がしてくる。手練手管に長けた北朝鮮といえども、年明け以降の展開は「最大限の圧力」に屈した金正恩委員長が、一族の生き残りをかけて一種の博打に打って出たというのが真相だ。どんなに激しい言葉で覆い隠そうとしても、その「本音」はすでにスケスケに露呈されている。だから、いまさら何を言っても始まらない。完全で検証可能で不可逆的な非核化を受け入れない限り、金正恩体制に生き残る術はない。そんなことはおそらくみな承知している。米国務省は北朝鮮が韓国との閣僚級会談を中止するとの発表を受けても、準備は「計画通り進めている」と冷静だ。

北朝鮮の立場に立って考えれば、米韓の合同演習よりも脅威なのは中国の変身ではないか。これまで2回の中朝首脳会談で、中国は北朝鮮の後ろ盾になるだろうとの観測が強まっていた。ところが、風向きが変だ。トランプ大統領が中国の通信機器大手に対する経済制裁を発表したあと、そのうちの1社である中興通訊(ZTE)が倒産の憂き目にあっている。ZTEをめぐって米中の風向きが変わった。中国はZTE救済に向けてトランプ大統領と極秘の“ディール”をしたのだろう。トランプが満足する取引、独断と偏見による勝手な推測だが、それは北朝鮮の孤立化だろう。これで北朝鮮は慌てた。閣僚級会談を中止して米国に圧力をかけてみたものの、すでに後の祭り。ここまで言うと少し深読みが過ぎるかも。事実なら米中の通商問題も解決に向かうだろう。トランプ“恐るべし”かもしれない。