北朝鮮の“豹変”をめぐる分析や続報が喧しい、今朝のニュースを読む限り、一昨日の独断と偏見に基づいた“トランプディール”の効力はどうやら怪しいようだ。昨日から今日にかけてメディアが報じるところによると、トランプ大統領は北朝鮮の豹変について「(中国が)影響を及ぼしている可能性がある」(bloomberg日本語版)と述べている。これが事実なら、一昨日の当コラムでは書いた「米国と中国が北朝鮮の孤立化で手を握った」という読みは完全に間違えということになる。正しくは中国が北朝鮮と組んで米国にプレッシャーをかけていると読んだ方がいいのかもしれない。もう一つの焦点である中国の通信機器メーカー、中興通訊(ZTE)救済策について同大統領は、「習主席からこれを検討するよう要請された。私は検討すると」述べている。あまりにも正直な発言だ。

米中の通商摩擦についてこれまで楽観的だったトランプ大統領が昨日は、「中国との貿易交渉が成功しないかもしれない」(同)と弱気の姿勢に傾いた。こういうニュースをみるとトランプ大統領というのは外見と違って内面は、相当デリケートでセンシティブな感じがする。こんなに正直に心の内をさらけ出して魑魅魍魎がうごめく外交を取り仕切れるのか、ど素人でも心配になる。ZTEを北朝鮮に絡めるディールは政治経験の豊富な大統領は思いつかないだろう。そういう意味ではアウトサイダーのトランプ氏らしいやり方だ。だがその裏を中国の習近平主席がかいているとしたら、トランプディールは子供のお遊びのように儚いものになる。

北朝鮮ばかりに気を取られていると世界の大勢が見えなくなる。エルサレムに大使館を移したトランプ大統領をイスラエルのネタニヤフ首相は熱烈に歓迎した。だがそのネタニヤフ首相は、ロシアのプーチン大統領と会談して密議をこらしている。シリア情勢はロシアとイランに支援されたアサド政権が徐々に勢力を回復しつつあるが、イランの非核化をめぐる6カ国協議から離脱したトランプ大統領の米国はいまや国際的な“威信”そのものを失いつつある。そこをロシアと中国が虎視眈々と狙っている。米国にとっては敵の敵は味方どころか、敵の敵も敵になり始めているのだ。北朝鮮に対してはリビア方式を否定しつつ、非核化が実現しなければリビア方式しかないと素人目にも単純な脅しをかけている。アウトサイダーは新緑の若芽なのか風に舞う枯葉なのか、何れにしても近いうちにわかるだろう。