自民党がまとめた「一億総活躍社会の構築に向けた提言案」の全容が3日、分かった。国民年金(基礎年金)の目減りを補うため高齢者住宅の提供など現物給付を検討することや、一定の収入がある高齢者の年金を減らす「在職老齢年金制度」の廃止を含めた見直し、認知症対策基本法の制定検討が柱になる。
現物給付や在職老齢年金制度の廃止を含めた検討は、少子高齢化による年金給付額の水準悪化を抑制することと、高齢者を働き手として確保するのが狙いだ。
提言案は、国民年金について「年金水準の長期的な低下とともに、高齢期の生活を保障する機能の低下が懸念されている」と問題点を指摘した。
国民年金が、給付額を自動調整する「マクロ経済スライド」により徐々に抑制されることを踏まえたもので、「最低保障年金という形ではなく、住宅提供による現物給付など、最低保障の生活を維持できるような制度の検討も重要」とカネからモノへの給付の検討を明記した。住宅確保の資金は国民年金の財源から捻出することになりそうだ。
在職老齢年金については「就労意欲のある高齢者がその能力を社会で発揮できるよう、年金財政に与える影響も考慮しつつ、廃止も含め制度の在り方について検討」するよう求めた。
在職老齢年金は、給与と年金の合計額が一定の基準を上回ると、厚生年金の一部か全部の給付を停止する制度。60歳から65歳未満は28万円、65歳以上は46万円を上回ると、給付停止の対象になる。
「会社役員で高い給与を得ている人らに年金を給付する必要があるのか」との考え方と「保険料を納めてきた人に年金を全く給付しないのはおかしい」との考え方がある中、働く高齢者にどれだけ年金を給付するかを調整する仕組みだ。
ただ、この制度は「年金がカットされるなら働くのをやめよう」と勤労意欲をそぐことになりかねない。制度廃止を視野に入れているのはこのためだ。
認知症対策基本法に関しては公明党が主導で進めており、与党は秋に予定される臨時国会で議員立法での成立を目指している。骨子案によると、政府に「認知症施策推進基本計画」の作成を義務付けている。
若年性認知症の人には「意欲と能力に応じた雇用の継続、円滑な就職その他の社会参加の促進」に資するよう求めている。厚生労働、文部科学、経済産業など関係省庁が連携して「認知症施策推進会議」を設置することも明記した。