所用があってニュースにじっくり目を通せない日が結構ある。それでもニュースは日々大量に流れている。だから1日ニュース・チェックを怠ると、現実に追いつくのが大変である。まして昨今のように重要な国際会議が重なっていると、正直言って誰がどこで何をしゃべったのかわからなくなる。それを整理するのが面倒だから放置する。でも、だからと言って生活に齟齬が生じるわけではない。逐一ニュースを追わなくても、しばらくすればなんとなく全体がわかってくる。専門家でもない限りこと細かくニュースをトレースする必要はない。むしろ、細かくニュースを追っかけていると逆に誤解することもある。それ以上に、本当に必要なニュースは意外に少ないのが実態だ。

この週末カナダで開かれたG7の財務省・中央銀行総裁会議で米国の保護主義が批判を浴びた。G7としては異例の緊迫した雰囲気だったという。国際問題を多面的に議論し、協調して対処する。先進7カ国の協調路線が曲がり角に差し掛かったようだ。米国を除いた6カ国がムニューシン米財務長官に批判の矛先を向けた。原因は米国の一方的な関税引き上げ通告にある。会議の様子を伝えるメディアの記事を見る限り、世界は本当に戦争に向かって突き進んでいるような印象を受ける。これに対してトランプ大統領は「貿易戦争では負けない」とツイートする。北朝鮮に対する強硬姿勢はすっかり影を潜めたトランプ大統領だが、今度は同盟国を含めた貿易戦争で「最大限の圧力」を強めつつある。だがこれも単なるトランプ・ディールに過ぎない。

トランプ大統領の狙いが11月の中間選挙にあることは間違いない。正義とか正当性を度外視してひたすら「America First」を貫こうとする。その結果として支持率が上がれば国際的な秩序や自由貿易という建前などどうでもいいのだ。「America First」はもはや「Make America Great Again」に向けた手段でもなんでもない。支持率を上げるための見え透いた戦術に成り下がっている。こうした中でメディアは何を伝えているのだろうか。北朝鮮問題は明らかに金正恩委員長のペースになっている。これに警告を発する記事はほとんどない。トランプ大統領自身が複数の首脳会談をちらつかせ始めている。短期間にCVID化するとの戦略はどこに行ってしまったのか。中国もイランも中東も、EUもロシアも中国も、トランプ式のディールで収拾がつくとは思えない。