規制改革推進会議が4日、第3次答申をまとめた。「規制改革推進に関する第3次答申 ~ 来るべき新時代へ ~」と題されており、農林水産、放送法、行政コストの削減、オンライン医療の普及促進、電子政府の徹底など様々な改革案が盛り込まれた。今後、この答申に沿って各種規制改革が実施に移されるはずである、中には、答申そのものに反対する人もいる。問題は実施のプロセスにおける政治の混乱である。獣医学部の新設では加計学園と安倍首相の近すぎる関係が問題となった。瑣末な行政手続きの瑕疵や不透明性がクローズアップされ、学部新設そのものの是非はほとんど議論されなかった。現状に固執する獣医師会の古過ぎる体質を批判する声もなかった。規制改革にともなう反対派の執拗な改革阻止がまかり通るのが実態だ。
第3次答申も議論の過程で反対論が先行する場面があった。放送事業の改革をめぐってテレビ業界が「放送法4条改正」に業界あげて反対した。IT化の時代を迎えて電波の利用ニーズは飛躍的に拡大する。電波は無限にあるわけではない。希少ともいうべき電波の利用をめぐって様々な議論があるのは当然だ。電波と通信の融合はその最たるもの。放送事業の公正・中立を規定している放送法第4条の見直しも、規制改革の一環としては当然のことだと思う。だが、ここでも守旧派の論陣は見直し阻止で一致する。日本では議論をすることそれ自体が許されないのである。憲法改正論議と似ている。一部の人たちは改正に向けた議論そのものを阻止しようと目論んでいる。この辺が規制改革に伴う最大のリスクなのかもしれない。
放送法以外にも難航が予想される分野はいろいろある。例えば、沿岸漁業の活性化問題だ。近場の海でお魚を取る権利は漁業法によって沿岸漁民に付与されている。漁業の活性化に向けて漁業権の抜本的改革を求める声があったが、漁協や漁連など水産業界の強い反対にあって漁業権は旧来の枠組みが維持された。林業も衰退業界の一つである。答申は「林業を将来にわたり地域の基幹産業とするためには、その生産性を高め、従事者の所得を向上させていかなければならない」と提言する。だが、具体的な施策はとなると「消費者を起点とするマーケットインの発想を取り込み、バリューチェーン全体の連携で利益を最大化するとともに、個々の現場では先端技術を貪欲に取り込む」と抽象論のオンパレード。答申も中途半端だが、具体化のプロセスには有象無象の反対派がたむろしている。日本の規制改革、相変わらず前途は多難だ。というより、絶望的かもしれない。