• 2000億円上限に新株の発行登録、1850億円で銀行から優先株取得へ
  • 将来の配当負担も抑制、研究開発投資にも資金を充当の方針
Photographer: Tomohiro Ohsumi

シャープは5日、公募増資により資金を調達し、過去に発行した優先株を買い戻すことを中心とした資本政策を発表した。2000億円を上限に普通株を発行し、金融機関から優先株を買い取るほか、事業拡大のための投資や研究開発にも充てる。

同社は同日、新株式発行を登録した。シャープの発表によると、2015年6月に発行した2000億円の優先株を約1850億円で取得する。19年7月以降に、この優先株に普通株への請求権が発生する前に買い戻し将来の希薄化や優先株の配当負担も抑制するとともに、研究開発投資などに資金を充当できるとしている。

シャープは、主力製品の液晶テレビや太陽電池事業で国際競争力が低下する中、16年8月に台湾の鴻海精密工業の傘下に入り経営再建に着手。鴻海との関係強化や組織・事業の効率化などを通じ前期は4年ぶりに最終黒字に転じていた。今回の資本政策で財務を正常化させ、事業を拡大する方針を明確にする。

アシンメトリック・アドバイザーズのシニアストラテジスト、アミ-ル・アンバーザデ氏(シンガポール在勤)は投資家向けのメールで同社の株価について「既にかなり高く評価されており、今後はさらに下がるとみている」と指摘。液晶パネルの価格下落やテレビの過剰供給によるプレッシャーがあり「売りのリストに入れている」とした。

シャープ株式は業績悪化で東証2部市場に降格されたが、17年12月には1部への復帰を果たした。優先株はみずほ銀行と三菱UFJ銀行が、それぞれ1000億円を保有している。今回の増資で現在シャープ株の65%を持つ鴻海グループの保有比率は低下するが、これまでに築いた取引関係は維持する方針だ。

シャープの株価は公募増資を実施するとの一部報道を受け、一時前日比10%安の2657円まで下げたが、正式発表後には下げ渋り4.1%安の2833円で5日の取引を終了した。