歴史的な米朝首脳会談をめぐる評価が世界中で盛んに行われている。西側メディアの評価は「CVID」が共同声明に盛り込まれなかった半面、軍事演習の中止に言及したトランプ大統領の“敗北”とするものが圧倒的。メディアはどうしてかくも一方的で画一的、類似的なのだろうか。いつも頭の片隅から離れない疑問である。こうした疑念を打ち消すような記事を読んだ。日経ビジネスオンラインに14日付で掲載された「非核化の義務を追うのは米朝ではなく北朝鮮、『核』より『お家の事情』が優先」と題された記事だ。「お家の事情」とはトランプ大統領にとっては中間選挙でありロシア疑惑である。これに対して金正恩委員長にとっては国内にある「抵抗勢力」や「暗殺」「クーデター」による命の危機だという。

 

金正恩委員長については人民を平気で虐待し、反対勢力は有無を言わさず抹殺、義兄の金正男氏は冷徹非道に暗殺した。米朝首脳会談終了後の記者会見でも米国人記者が人権無視の極悪非道な金正恩委員長を「どうしてあなたは評価するのか」と詰め寄っている。個人的にも同感で、これが金正恩委員長を許せない点である。だが、そんな金正恩委員長も国内的には「暗殺」の危機に直面しているという。命を付け狙うのはもちろん軍部だ。軍部は「核放棄反対」「米帝の首魁と会談するなどとんでもない」と内心思っている。金委員長が二人だけの首脳会談の冒頭、やや緊張した面持ちで「ここまでくるのはそれほど容易な道ではありませんでした」と述懐している。首脳会談にしては珍しいやりとりだ。それを受けてトランプ大統領は握手を求め、親指を立てて賛同の意を示している。

 

この記事の筆者である重村智計氏は、金委員長が直面している軍部の圧力を抑えるためにトランプ大統領は、「米韓合同軍事演習の中止」に言及したと指摘する。思わずなるほどと納得した。トランプ氏もあえてそこ説明しない。メディアの批判が集中することを覚悟の上で、相手の立場を慮って真相は伏せる。おそらくこれは政治家が負わなければならない“宿命”のようなものだろう。これが事実なら米朝首脳会談の評価は「大成功」に180度変わるだろう。今後の推移が重村説を実証するのを待つしかない。対照的に今朝の朝日新聞は「演習が実際に中止され、それが長引けば、北朝鮮に対する抑止力は低下する。会談のあいまいな合意の『落とし穴』が早くも露呈した格好だ」とわけ知り顔に解説する。個人的には重村説に軍配をあげたい。それにしても多くのメディアは、どうしてかくも「一方的」で「一面的」なのか。答えは自分で探すしかない。