注目イベントが先週終了、今週は静かな1週間かと思いきや、早朝に震度6弱の激震が大阪を襲った。災害は忘れたころにやってくるはずだが、最近は生々しい記憶が鮮明に残っているさ中にやってくる。全てにスピードアップしている時代である。災害も忘れる暇がないほど頻度が増している。そんななかで押しても引いても動かないのが物価だ。黒田日銀総裁が5年前に2年間で達成するといった2%の物価目標だが、実体はやっと0.7%程度にたどり着いたという状況。目標の2%は依然としてはるか彼方である。先週の金融政策決定会合を受けて黒田総裁は会見で、「企業や家計に残った根強いデフレマインドが原因」と分析した。この説もすでに耳にタコができるくらい聞いた。
個人的には少子高齢化や企業の分厚い内部留保、利益を度外視した価格破壊など、どちらかというと社会や企業の構造変化が大きな要因ではないかと思っている。だが、悲しいかな、それを検証する術がない。黒田総裁は「根強いデフレマインド」に原因を求めるが、失われた20年を経ていまだにそうしたマインド(心理)が残っている原因はどこにあるか、そこを探るべきではないか。同総裁はマインドのほかにも「生産性の向上」、企業経営者の「慎重な先行き見通し」などを要因としてあげている。生産性は心理的な要因というより日本経済の構造的な変化である。先行きの見通しも少子高齢化やグローバル化といった構造変化をベースにしている。デフレが15年から20年続いたとしても、足元はデフレではない。デフレマインドだけが残っているという原因を解明しなければ、なにごとも前に進まない。
FRBは先週の公開市場委員会で政策金利を0.25%引き上げた。年内にあと1〜2回の利上げが予想されている。ECBは資産の買い入れを年内に終了することを先週の理事会で決めた。10月からは毎月の買い入れ額を現行の300億ユーロから150億ユーロに削減する。米国とEUが超金融緩和政策を転換する中で、日銀だけが超金融緩和を続けている。この状態は何を意味しているのだろうか。日本は遅れているのか、ひょっとすると米国やEUよりも進んでいるのかもしれない。いずれにしても欧米との金融政策の違いについて納得できる解説を聞いたことがない。「デフレマインド」が原因だとしても、それを解消する方策を提示しているとは思えない。いや、超金融緩和という政策で、凝り固まったデフレマインドを解きほぐそうとしているのだが、5年経っても結果がでない。こうなると心理要因だけでは納得できない。構造分析を含めた要因分析が必要な気がする。