産経ニュースに掲載されている写真
個人的に毎日ニュースをみている。それで事の良し悪しを判断しているのだが、メディアに出ているニュースが嘘だとしたら、判断それ自体が間違ったものになる。産経ニュースに掲載された「親子分断象徴の『泣きじゃくる女児』、実は母親と一緒…」というニュースは、トランプ大統領が叫び続けているフェイクニュースの典型的な実例だ。親から引き剥がしても強制的に収容所に入れるとしていたトランプ大統領の不法移民の子供に対する移民政策を、大げさに言えばこの1枚の写真が変更させた。その写真が実は“嘘”だったということになれば、裏で意図的な作為が働いていたことになる。サンダース米大統領報道官は「女児の写真を利用した民主党やメディアは恥ずべきだ」と批判した。
記事によると「写真は米国境警備当局に同行した報道カメラマンが12日に撮影。女児は2歳前後で南米ホンジュラスから米国に亡命申請し、南部テキサス州国境で身体検査を受ける母親を見上げて泣きじゃくっていた」とある。この写真をみて多くの人がトランプ政権の移民政策に反対した。そしてトランプ大統領その人に対しても、幼気な女の子をいじめる悪い大人というイメージを植え付けた。ところがこの写真は親と分離されて泣いているわけではなく、母親と一緒にいながら泣いていたというのだ。これは完全に事実の歪曲であり、ためにするデマゴーグということになる。トランプ大統領が指摘するフェイクニュースならぬフェイク写真の典型だ。訴える方向は正しくても手段は完全に間違っている。
カメラマンか編集者か、誰がこの写真をトランプ政権が進める移民政策の批判キャンペーンに利用したかわからないが、利用した人の責任は免れないだろう。おそらく民主党もメディアも事実関係を知らないままこの写真が訴える“事実”を信じたのだろう。かりにそうだとすれば民主党もメディアも騙されたことになる。ITが進歩しSNSが広く深く我々の生活に侵入している。そして誰でも写真を加工して都合の良い“真実”を発信することができる。民主党やメディアに限らず、多くの人が簡単に騙される時代なのである。そうしたことを考えると、この写真のように目の前に提示された“事実”なるものを簡単に信じてはいけない時代なのかもしれない。1枚のフェイク写真は、移民政策の是非とは別に時代の危険性を象徴しているような気がする。