トランプ政権は本日、日本時間午後1時1分に340億ドル(約3兆7600億円)相当の中国製品を対象に輸入関税を引き上げる。予定通りに関税の引き上げが実施されるというだけで目新しいことは何もない。昨日のニューヨーク市場で株価は上がった。貿易戦争勃発の可能性は確かにある。だが、当面は様子見に徹するということだろう。いや、貿易戦争はすでに始まっている。中国の金融市場が日増しに不安定になっている。そこがむしろ心配だ。実体経済に影響が出る前に、日々心理戦争を繰り広げている金融市場の方が先に反応しているようだ。中国株が急落したり人民元の海外流出は始まったりすれば、貿易戦争どころではなくなる。通商交渉をめぐる中国とアメリカの駆け引き、ここでは中国の方により懸念材料が多そうだという現実だ。

例えば半導体メモリー製造の米マイクロン・テクノロジー(マクロン)は裁判所から中国での販売停止命令を受けたが、業績への影響は売上高の1%程度にとどまるとの見通しを発表。5日に急落した株価がその後に急回復している。中国政府も何やら及び腰だ。米国に対する報復リストに含まれていた米国産LNGに対する課税を直前になって見送った。ロイターによると大気汚染対策として米国産のLNGに頼らなければならないという事情があるようだ。強気一辺倒とみられる中国にも相当“弱み”があるような気がする。時差の関係で追加関税の引き上げは中国が最初に実施すると見られていた。直前になって中国はそれも見送った。なんとなく中国側が妥協したがっているように見えるのだが、はたしてどうか?

とはいえ、米中の貿易摩擦が世界経済にとって大きな影響力を持っていることはまちがいない。昨日発表されたFOMCの議事録(6月12─13日開催)によると、「力強さを見せている経済が通商問題を巡る世界的な緊張の高まりで影響を受ける可能性がある」との懸念を表明している。貿易戦争が長期化し、追加関税の応酬になれば米国経済にとどまらず景気は世界的に悪化するだろう。米中ともいまのところ強気の姿勢を崩していないが、メッディアが伝える様々な情報の中には通商交渉の早期決着を期待する声が溢れている。そんな記事をみていると、意外に早く交渉は決着するような気がするのだが。これは根拠のない期待感に過ぎないのだろうか。