[ワシントン 6日 ロイター] – 米労働省が6日発表した6月の雇用統計は、景気動向を敏感に映す非農業部門の就業者数が前月比21万3000人増と、市場予想の19万5000人増を上回った。

こうしたなか、賃金の伸びは安定的で、緩やかな物価上昇が見込まれることから、米連邦準備理事会(FRB)は段階的な金利引き上げを継続するものとみられる。

失業率は18年ぶりの低水準である3.8%から4.0%へと上昇した。上昇は10カ月ぶり。底堅い労働市場を背景に、より多くの人が職を探し始めたことが要因となった。市場予想は3.8%だった。

4月と5月の就業者数は当初発表から3万7000人分上方改定された。労働人口の伸びに対応するためには月に約12万人増える必要があるとされている。

JPモルガン(ニューヨーク)のエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「雇用統計は経済に過度のインフレ圧力がかかることなく潜在率を上回る成長余地が依然あることを示しているという点で良好といえる。同時にFRBが後手に回っているとのタカ派の懸念も後退するはずだ」と述べた。

6月の雇用の内訳は、建設業が1万3000人増。5月は2万9000人増加していた。製造業は3万6000人増と半年ぶりの大幅な伸び。5月は1万9000人増加していた。前月落ち込んでいた自動車関連が持ち直した。政府部門は1万1000人増。5月は5000人増だった。一方、小売業は2万1600人減。5月は2万5100人増加していた。

生産活動に従事し得る年齢の人口に占める働く意志を表明している人の割合、いわゆる労働参加率は62.9%と、5月の62.7%から上昇した。上昇は4カ月ぶりとなる。労働市場への参入者数は60万1000人となった。

現在は職を探していないが働く用意のある人(縁辺労働者)や正社員になりたいがパートタイム就業しかできない人を含む広義の失業率(U6失業率)は7.8%と、前月付けた17年ぶり低水準である7.6%から上昇した。

1時間当たりの賃金は、前月から5セント(0.2%)上昇と、5月の0.3%から伸びがやや鈍化した。前年同月比では2.7%の伸びとなった。

ただ募集中の就職口は4月時点で670万件と、過去最高を記録していることから、賃金は年内にも伸びが加速すると期待されている。

FRBが物価の目安とするコア個人消費支出(PCE)価格指数は5月に2.0%上昇し、6年ぶりにFRBの物価目標である2%に到達した。

SSエコノミクス(ロサンゼルス)の首席エコノミスト、スン・ウォンソン氏は「経済が底堅く推移し労働市場も引き締まる中、賃金は今後伸びが加速する可能性もあるが、その一方で中国などとの貿易摩擦が続けば企業の設備投資に響き、雇用や賃金が圧迫される恐れがある」と指摘した。

雇用統計を受け、主要6通貨に対するドル指数.DXYは下落し3週間ぶりの安値を付けたほか、株式や長期国債価格は値上がりした。

5日に公表された6月12─13日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨では、FRBの経済に対する前向きな評価が明らかになった。FRBは6月に今年2回目となる利上げを実施し、年内にあと2回利上げする見通しを示した。

最近の個人消費支出や貿易の統計も、今年下半期に経済成長率が大幅に加速することを示唆している。

第2・四半期国内総生産(GDP)予想は年率で4%超。第1・四半期の2.0%増の倍以上のペースだ。ただトランプ米大統領の「米国第一主義」政策によって米国は主要な貿易相手国と今にも貿易戦争に突入する勢いで、労働市場や経済に影を落とす。

トランプ大統領は国内の産業が不当な競争にさらされていると主張し、鉄鋼やアルミニウムなど幅広い輸入品目に関税を課した。中国やカナダ、メキシコ、欧州連合(EU)などの主要な貿易相手国は、報復措置に出ている。米国と中国は6日、互いに340億ドル相当の輸入品に関税を課した。

エコノミストらは、報復関税の応酬で雇用や資本投資のペースが落ち、製造業が被害を受けるとみている。