ポンペオ米国務長官が5日から北朝鮮を訪問した。これで3回目である。7日に北朝鮮を離れるにあたって同長官は、「誠実で生産的な話し合いだった」と今回の訪朝の成果を公にした。これで北朝鮮の非核化は順調に進むだろうと期待を寄せたすぐ後だった。北朝鮮の外務省はポンペオ氏が離朝したした直後に、「一方的でギャンブルのような非核化要求だった」と米国の対応を批判した。それだけではない。北朝鮮は「非核化への我々の意思が、揺らぎかねない危険な局面に直面することになった」と総括したのである。両者の言い分は根本的にかみ合っていない。どちらを信じればいいのか。北朝鮮の言い分は例によって“ブラフ”のような気もする。だが、米朝関係が予想以上にギクシャクしていることは想像に難くない。

8日に日本訪れ韓国を交えて日米韓の外相会談が行われた。この後、3人が揃って記者会見をおこなった。この会談では3カ国は連携して北朝鮮のCIVD化に取り組むことや、安全保障体制をめぐって緊密に連携していくというこれまでの方針を改めて確認した。ロイターによるとポンペイ氏は会談後の記者会見で、「はっきりというが、北朝鮮は会談で完全で検証可能、不可逆的な非核化に再度コミットメントした」と主張した。そして、「かなり詳細に次のステップについて話し合った」、「ミサイル試験場の施設破棄、米兵の遺骨返還に向けた協議に北朝鮮が同意した」とも発言した。この発言を信じれば、北朝鮮の非核化は順調に進んでいるようにもみえる。だとすれば、「一方的でギャンブルのような」という北朝鮮外務省の主張は何を意味するのだろうか。

ポンペオ長官は会談に先立って安倍首相を訪問、北朝鮮に対して拉致問題をはじめ「あらゆる問題を提起した」ことを明らかにした。日本側から見れば心強い発言だが、「あらゆる問題を提起」した裏側に、「非核化でこれ以上前に進むことは難しい」との判断があったとすれば、この発言の解釈は一変する。米国から“正論”をぶつけられて北朝鮮も困っているのではないか。はじめから北朝鮮は交渉のための交渉を行っているに過ぎない。だが、交渉の長期化はトランプ政権にとってリスクが大きすぎる。だから3回目のポンペオ氏の訪朝は、北朝鮮に引導を渡すことが目的だったのではないか。関係改善を諦めて「あらゆる問題を提起した」のである。だから3カ国は会談後一堂に会して新たな情勢に対する認識を共有する必要があった。だが、米朝関係破綻の可能性については、トップシークレットして封印された。果たしてどうか?