トランプ大統領の欧州訪問は西側陣営の亀裂と相互不信を深めた。飛ぶ鳥後を濁して、今度はヘルシンキでロシアのプーチン大統領と首脳会談を行う。日本時間の今夜だ。この会談のあとトランプ大統領は、笑顔を振りまき成果を強調するだろう。大統領の支持者及び11月の中間選挙でまだ投票先を決めかねている有権者に向けてである。トランプ大統領の魂胆は見え透いている。それでも大統領である。巨大な決定権を持っている。見え透いているからダメだと言っても始まらない。巨大な権力にどう立ち向かうか、西側陣営の悩みは尽きないだろう。ドイツのメルケル首相はロシアとの間で計画しているパイプライを巡って強烈な批判を浴びた。その大統領が今度はロシアから何かを引き出そうとしている。見返りは経済制裁の解除か。
欧州とトランプ大統領の間に生じた亀裂は、貿易摩擦と財政問題が理由である。巨額な貿易赤字を抱えている米国が、貿易黒字国や財政緊縮を主張するEUの同盟国に苦言を呈している構図だ。EU離脱を表明している英国に対しては、賛意を示しながらやり方が拙いと文句を言っている。挙げ句の果てに首脳会談では、手のひらを返したようにメイ首相をベタ誉めにするという体たらく。まるでピエロか太鼓持ちのようだ。北朝鮮の金正恩委員長を持ち出すまでもなく、誉めたり貶したりトランプ氏の人物評は全く当てにならない。米朝首脳会談後の記者会見のように、プーチン大統領との会談後には満面に笑みを浮かべながら、核兵器の削減に合意したと大ミエを切るのだろう。合意するのは時期も手法も明記しない一般的な合意、つまり「核兵器を削減しよう」である。そんな約束なら誰だってできる。
中国の習近平主席に対しては表面的には一見穏やかに振る舞う。「私は習主席を尊敬している」。折に触れてトランプ大統領は習主席を持ち上げる。その一方で貿易問題に関しては要求が厳しくなる一方で、何やら本格的な貿易戦争の雰囲気すら漂う。強行策の効果がで始めたのか、今日の産経新聞には「習主席統治に不満噴出か 中国、党内に異変相次ぐ」という記事が載っている。共同通信が配信した記事だ。一党独裁で権力を独り占めする中国では考えられないような内容だ。これがトランプ氏の戦略に基づくものだとしたら、トランプ大統領“恐るべし”だが、そうではないだろう。その日の気分に左右されながら思いつくままにした発言が、結果的に効果を発揮することがある、その程度のことだと思う。それでも世界が動くのだから、米国の大統領は無視できない。