小泉純一郎元首相と小沢一郎自由党党首、かつての宿敵が“脱原発”で急接近しているとの記事をきのう朝日新聞で読んだ。小泉氏は首相在任中、党首討論で当時の小沢民主党代表と渡り合うなど、長い政治生活の中で敵対し続けてきた。その2人が脱原発では意気投合しているという。朝日新聞の記事は来年の参院選で3度目の政権獲得を目指す小沢氏に焦点を当てたものだ。過去には朝日新聞の小沢氏バッシングは相当苛烈だった。その朝日が小沢氏の最近の動向に注目しているというから、メディアの論調も右に左に揺れている証拠だろう。“安部憎し”の感情が「野党結集」で政権獲得を目指す小沢氏を“忖度”させるのかもしれない。老兵が手を握り合えば新たな“希望”になるのか、現実はかなり厳しい気がするのだが。

小泉氏といえば、「自民党をぶっ潰す」の名台詞が政権を支えた。なんだかよくわからないが、短いワンフレーズが有権者のこころをくすぐった。不思議な人だ。小泉氏は「A41枚の政治家」と言われた。国民の絶大な人気を背景に次から次と手荒な改革を打ち出した。郵政改革はその最たるものだ。その小泉氏は官僚の説明はA41枚にまとめることを要求したと言われている。2枚を超えると説明を拒否したと当時噂されたが、これは嘘だろう。ポイントを集約して手短な説明を求めたということだと思うが、ここからシングルイッシューの政治家と言われるようになった。考えてみれば小泉氏の政策は「自民党をぶっ潰す」発言以降も、「郵政改革」「脱原発」といつもワンフレーズで世間に喧伝されている。

片や小沢氏。長い政治経歴の中でいつも改革、改革と言っていたような気がする。米国と渡り合った通信の自由化が今日のスマホに発展したことを思えば、政治家としての先見の明はあった。湾岸戦争のときに海部内閣の幹事長で、「ショウ・ザ・フラッグ」を要求する米国に1兆円の戦費拠出で答えたのは今でも記憶に残っている。剛腕、辣腕のたどり着いた先は6人の自由党党首である。その小沢氏も最近は「野党結集」のワンフレーズで存在感を高めている。これも一種のポピュリズムか。なんのための野党結集か、脱原発でどういう日本を作るのか、シングルイッシューポリティックスからは日本の未来像が見えてこない。小沢氏を取り囲む野党の政治家からは、未来像どころか政策のせの字も聞こえてこない。同じワンフレーズでも過去には「高度経済成長」「日本列島改造」「戦後政治の総決算」など未来像につながるフレーズが並んでいた。「脱原発」「野党結集」だけでは政治の裾野は広がらない。