台風12号の進路は世の中の常識を覆した。三重県に上陸して西日本を逆走、現在も九州の西に停滞している。偏西風に流されて西から東に移動するのが台風の進路と思い込んでいる人が大半ではないだろうか。これが日本人の常識だ。その常識を覆して台風が東から西に進んだこと自体、異様な気がする。日本というよりは地球環境はどうなってしまったのだろうか、そんなことを考えても仕方がないと思いつつ、ついつい余分なことを考えてしまう。台風10号で被災された方々を含め、自然環境の激変に翻弄されている被災者の方々に心からお見舞いを申し上げる。そして、自然災害に備えて我々は何をすべきなのか、改めて考えてみるべきかもしれないと思った。
台風10号がもたらした惨禍は記憶に新しい。予想をはるかに超えた量の雨が、集中豪雨のように西日本を襲った。もちろん雨の量は場所によって違いはあるだろう。その雨が山の斜面を流れ下ると同時に森の中に散財していた倒木を押し流し、それが重なって原木をなぎ倒し一気に流れ下ったのだ。ところによっては山肌を抉り取り、泥流とともに川に流れ込んだ。泥流や倒木、流木が一緒になって押し寄せれば、橋桁に引っかかって流れを堰きとめる。川が堰き止められれば集中豪雨によってもたらされた大量に水は溢れてしまう。かくして西日本の各地で川が氾濫し、周辺の地域が水没するという甚大な被害がもたらされた。森も川も雨もわれわれの生活にとってなくてはならないものである。その不可欠なものが今回の台風では“凶器”になったのである。
自然災害の防止策は常日頃から検討されている。それは国、県、市町村の各段階で真剣に検討され、必要な対策は実行されていると思う。ど素人が気まぐれにあれこれ言っても意味はないと思う。そんな中で一つだけ気になるのは、森の手入れは果たして十分かといいうことだ。人手不足は山間の林業にも及んでいるはずだ。輸入木材が増えたことにより、日本の木材自給率は35%を切っている。国土の70%弱を森林が占めている国としてはこの水準はあまりにも低い。森林には国土を保全し水資源を生み出し、地球温暖化を防いで自然災害を防止するといった多面的な機能がある。流木や倒木で多くの民家が水没した今回の災害を機に、間伐や倒木の処理など森林に人手入れる対策を考えてみるべきではないだろうか。コンクリートでいくら川の護岸を行っても水害は防げない。