今朝のニュースで関心を引いたのはブルーンバーグの次の記事。「アジア首位復帰、日本株への関心高まる公算-日銀や企業業績が支え」、日本株の時価総額が中国を抜き、米国に次いで第2位に浮上したというもの。その理由が面白い。「中国と米国がお互いの国の窓にれんがを投げつけたら、双方にガラスを売る国が利益を得ることになる」と解説、「それが日本だ」と言うわけだ。発言の主はCLSAという会社の株式ストラテジスト、ニコラス・スミス氏。米中の貿易摩擦が激しさをます中で、このところ中国の株式市場は連日値を下げている。その間隙を縫って日本株が買われているというもの。こうしたコメントを拾いながらブルーンバーグは「市場関係者の間からは、日本株への関心が今後一層高まるとの見方が聞かれる」としている。
米国と中国がお互いに窓ガラスを割り合えば、ガラスを売っている日本は儲かるという筋立てだが、そんなことは現実的には起こらない。ガラスを割られた中国の製造工場の多くは日本企業が出資あるいは独自に設立した工場である可能性が高い。米国の製造工場も中国同様に日本企業が出資や独自に建設したものだ。結局、米中のレンガの投げ合いは日本を巻き込むことになり、日本にとっては何の利益ももたらさない。それ以上に米中両国に関係している日本の被害は二重にかかることになる。結局は米中の貿易摩擦は日本に大きな悪影響をもたらすわけで、決して“漁夫の利”を得るというわけにはいかない。日本はむしろ喧嘩の仲裁に入ることもできずに、他人の喧嘩に巻き込まれる主体性のなさに“ほぞ(臍)を噛むのが関の山”ということになりかねない。
それでも株式市場では中国株が値下がりし、日本株は上昇の気配を強めている。もっと言えば、喧嘩を売っている米国の株式市場がことのほか堅調だ。中国は株だけではなく人民元も連日安値を更新している。問題の本質はここだ。米中貿易戦争が激しさを増す中で中国株と人民元は値下がりし、ドルと米国株が値上がりしていることだ。これは一時的な現象なのか、構造的な変化を先取りしているのか、その解釈は分かれる。仮に構造的な変化ということになれば、トランプ大統領と習近平主席の戦いはトランプ氏に軍配があがる。逆になれば中国の支配権が一段と強まるだろう。間に挟まった日本は、親米国という以外に米中の二国間対立に向き合う政策がない。唯一の政策がTPPをはじめとした自由貿易の擁護。だがこの視点は米国と対立する。従って日本が生き延びる道はTPPに米国を引っ張り込み、日米主導で自由貿易を擁護することだが、この道にも多くの障害が転がっている。ここにガラスを売る日本の苦悩がある。