トルコ・リラの急落が止まらない。昨日はアルゼンチンの中央銀行が緊急会合を招集し、政策金利を5%引き上げ、年45%にすると発表した。リラ急落に連動してアルゼンチン・ペソの値下がりが続いているための緊急対策である。アルゼンチン・ペソに限らず南ア・ランド、メキシコ・ペソ、インドネシア・ルピアも下落している。通貨の下落に連動して外貨の流出も起きているようだ。トルコと米国の関係悪化は通貨安という形で世界に波及し始めている。世界中でトランプ政権の強硬策を引き金とした波乱が巻き起こっている。それでもトランプ政権に妥協の動きは見られない。米中の貿易摩擦も北朝鮮の非核化もイランと米国の対立も、一向に収束の気配がみえない。国際社会の不透明感は強まる一方だ。
トルコと米国の対立は、一昨年、エルドアン大統領の転覆を企てた軍部のクーデターに端を発している。エルドアン大統領は、クーデターの裏に米国人牧師がおり軍をそそのかしていると断定。この牧師を拘束した。これに対してトランプ大統領が同牧師の即刻解放を要求、これをエルドアン大統領が拒否したことから両国の対立は始まった。エルドアン大統領はその後、憲法を改正して大統領権限を強め独裁的な権力行使を行ってきた。最近ではリラ急落に歯止めをかけようと利上げを模索する中央銀行に露骨に反対するといったことも起こっている。業を煮やしたトランプ大統領は鉄鋼・アルミの関税をトルコに限って50%に引き上げるなど、経済制裁という形で対抗している。
軍事クーデターという政治問題に起因した対立がとうとう経済問題に波及、トルコ・リラの急落を招いた。急落がトルコ・リラに止まっている限り問題はたいして大きくはならない。が、昨日エルドアン大統領は「米国に告ぐ。これは恥ずべきことだ。戦略的な北大西洋条約機構(NATO)同盟国を牧師1人と引き換えにしているのだ」と痛烈に批判した。この発言を受けて対立長期化を予測したマーケットはトルコ・リラの売りを加速したのである。政治家が愚かだというつもりはないが、国際的な政治問題は“妥協”なしには解決しない。2人の大統領が面子にこだわっている限り、通貨危機が本物の経済危機に発展する可能性もある。個性的な2人の大統領による“賢明”な対話が必要だ。