週末の18日(土)、ドイツのメルケル首相とロシアのトランプ大統領がベルリン郊外で会談した。日本では大きく取り上げられていないが、自動車関税やイランをめぐってしっくりしない米国と欧州の間隙を縫うようにプーチン大統領が欧州に接近している構図だ。朝日新聞は「シリア内戦、イラン核問題、ウクライナ東部紛争、エネルギー問題などを議題とした。トランプ米政権と欧州連合(EU)の関係が冷え込むなかで、欧州の盟主ドイツがロシアと協調する姿勢を改めて印象づけた」(19日付け、朝日新聞デジタル)と解説している。プーチン大統領は今回、ドイツに向かう途中でオーストラリアに立ち寄り、クナイスル外相の結婚式に出席した。いつも強面の大統領だが、外相とダンスを踊るなど「EU議長国を務める同国に特段の配慮をした格好だ」(同)。米国ファーストは欧州とロシアを近づける役割を果たしている。

ドイツを筆頭に欧州諸国はロシアのウクライナ侵攻を契機に関係が悪化していた。米国、欧州など西側諸国が対ロシア経済制裁を発動、ロシアは孤立化を余儀なくされてきた。だが、米国と欧州の関係も7月に開催されたNATO首脳会議を契機に悪化した。この会議に出席したトランプ大統領は欧州諸国にNATOの費用負担を大幅に引き上げるように要求、その上でドイツとロシアのエネルギープロジェクトに反対する姿勢を鮮明にした。ドイツはロシアのウクライナ侵攻を批判する一方で、ロシアからパイプライを引く計画を推進している。このエネルギー計画(ノルドストリーム2)がロシアに対す経済制裁に反するとトランプ大統領は非難しているのである。18日の首脳会談でプーチン大統領は「(この計画は)ロシアから欧州へのガスの中継リスクを最小限にする。純粋な経済プロジェクトだ」(ロイター)と政治的な意図はないと強調した。

この問題についてメルケル首相がどのような反応を示したのか、メディアにはこれに関する情報が見当たらない。ロシア大統領府(クレムリン)のペスコフ報道官が「プロジェクトを遂行するためには、第三国の横槍に対処するための措置を取ることが必要と述べた」とのコメントがロイターに掲載されている。「第3国の横槍」に対処する方法がどういうものか、メルケル首相がこれに対してどう反応したのか、この記事を読む限りはっきりしない。とはいえ、独露首脳会談にとどまらず欧州諸国やロシア、中国、イラン、あるいは北朝鮮を含め、トランプ大統領の米国第一主義への対抗策をいろいろと模索していることは間違いない。日本はTPPを中心に貿易面では米国抜きの多国間関係の強化を目指している。米中の貿易問題については明日から両国の事務方の折衝がはじまる。「米国」対「主軸なき多国」間の戦いはまだまだ続く。